エンジニアの変わらない価値と変わる価値との付き合い方


今日から仕事始めの人も多いと思います。
さて、この三が日に今年の目標をしっかり立てた人もいれば、ぼんやりと向きだけでも意識した人もいたでしょう。

一旦仕事が始まってしまえば、自分の立てた目標も棚に上げた状態でプレッシャの中で走り続けていかなければなりません。つい此間までの状態に戻るのです。
でも、少しだけ普段と違うことは、お正月という歳を改まる儀式が人の襟元を立たせる雰囲気を作る、ということです。
はやり、儀式のような形式めいたことは人のこれまでの振る舞いとこれからの行いを思い立たせるには良いものです。

みなさん夫々、どのようなことを年始に想い、何に挑戦しようと想いを馳せたのでしょうか。


変わる価値と変わらない価値
エンジニアであれば、今年も自己伸長に挑戦し続けなければなりません。それは、技術が進み、周りのエンジニアが伸びつづけるからです。同じ技術、同じ仕事では、エンジニアとしての価値を維持することは難しいのです。

エンジニアの価値には変わらない価値と変わる価値があります。変わらない価値とは、時間を重ねても目減りしない価値です。変わる価値は時間とともに目減りする価値です。

ここ(勉強したことを価値に変えるループを作ろう - 室長のひとりごち)で整理したスキルの一覧をもう一度見ましょう。

項番 視点 テーマ 考え方
1 基礎スキル 文章力/意思疎通/チームプレイなど 業務を通して会得したい基礎スキルを実践します。
2 技術スキル 担当する技術領域で必要な技術知識/方法論など 業務を通して会得したい技術スキルを実践します。
3 社内研修 社内で用意されている学習 業務で得られない知識体系などを社内研修を通して補完します。
4 自己研鑽 社内研修では用意されない学習 社内研修で得られない知識体系などを自己研鑽として補完します。


変わらない価値とは、表の項番1の基礎スキルをいいます。この基礎スキルは、経験年数を幾ら重ねようとも目減りすることはありません。なぜなら日常使わなければ仕事にならないスキルであるが故、自然と自らそのスキルを磨くことになるからです。

この変わらない価値を持つ基礎スキルは、ある程度のレベルまでの力をつけ、実践していくことのリターンを感じやすいスキルでもあります。課題の整理の仕方やコミュニケーションの取り方は、ちょっと変わるだけでその結果も周りが持つ印象もとても鮮明にわかります。レビューアとしてドキュメントに接するとき、文章表現がちょっとだけ言い回しが変わるだけで内心ビックリするものです。

基礎スキルは、誰でもどの職種でも必ず必要で、社会の一員としている限り欠かすことはできません。成長の手を抜けば、痛い目に合うのは自分だし、組織の中の研修で用意されていることも少ないことが、実は落とし穴でもあります。
#だから自己啓発本が書店に沢山並び、そこそこの需要があるのです。

今日から年始の仕事が始まる、今日は休みで来週から、に関わらず、基礎スキルで必要だと思うスキルを全部書き出して、どの基礎スキルを伸ばすのかを真面目に考え、行動に移すことを強く推奨します。


一方、変わる価値は、先の一覧の技術スキルにあてはまるスキルです。これは、ずっと同じ技術領域を担当しているからと言って、他の領域について放置しておけるものではありません。なぜなら、あなたの仕事に適用する技術は“今は”同じであっても、来期まで同じとは限らないからです。

また、ロールだって変わっていくでしょう。いつまでも同じ人達でプロジェクトチームを構成しているわけにはいきません。顧客、若しくは、自分の所属する組織の理由によって、世代交代という大義名分のもと、要員ランクの見直しから固定費の低減をするものです。それが同じメンバでチームを組ませ、経験を重ねさせ、チームの成熟度をあげさせている一つの理由です。

いままで一担当のエンジニアが突然リーダをやる様に要求される、と言うことです。そのときになって必要な、プロジェクト管理手法、開発方法論、上流工程の知識をいつ学ぶのか、ということです。そして、それらの開発手法のフレームワークの上に載る技術そのものも顧客の要求、ベンダのサポート切れ、自組織の採用技術の方針変更により変わっていくのです。

自分で持たざる得ない技術は、しかし、そのときに必要な技術でもあります。基礎スキルの上に載せる開発手法と適用技術、その二つの技術スキルは、世の中の動向によりいくらでも様変わりします。これは、自分の好みで選べるものではなくて、顧客と社会の要請により変遷せざる得ないものです。

このことからも、技術スキルは常に動向は知っておかなければならないし、いつでも学び、自分のモノにできるように日頃から学びを継続しておかなければなりません。



ひと皮剥ける
技術進化のスピードは、ホント、ついていくことが難儀なくらいです。それほど変わらないだろう開発手法であっても、アジャイルスクラムくらい“正しく”知っておかなれば、この短期、低コストのバジェットの中でプロジェクトを成功裏にキャリーすることは、真っ当なウォーターフォールだけでは無理があるというものです。

エンジニアであれば、アレもやりたい、これもやりたいと欲張ることが本性であると思いますが、その中で本当に自分が実現したいたった一つの目標を決めて、紙切れに書き記し、手帳でも机の前でもトイレの壁でも見えるところに貼って、いつもそれを見てときどきは襟を正し、年末には、その一つだけでも“ひと皮剥けた”と自分と喜べるような1年にしたいものです。

今年も1年よろしくお願いします。