栞を作れないエンジニアにシステムは作れない


アーキテクトはもちろん、プロジェクトマネージャでもシステムエンジニアでもものづくりに携わるなら何を作るのかそのイメージを持っていなければゴールに辿り着けない。いや、スクラッチのアプリなんで、っいなら、何を前提に契約したのかを小一時間くらいコンコンと伺いたいくらいだ。


なぜ、完成像が必要かはとても単純な話で、行き先が分からなければ想定したヒト・モノ・カネ・時間で出来上がらないから。それは栞のない遠足と同じこと。小学生のときの遠足の栞を思い出そう、何が書いてあったかを。


ワタシたちはどこに行くのか
乱暴に言えば、“行き先”と“ざっくりした行程”と“持ち物”、“注意事項”くらいじゃないだろうか。行き先は、まさに完成像そのものだ。遠足であるが故に目的地まで行って帰ってくるまでが遠足だから行って何かを経験してお家まで無事に帰ってくるのが遠足になる。


遠足で栞がなかったら?ミステリーツアーがあるじゃないって?でもそれだって旅行会社では企画書があるのだから栞はあるんだよ。


システムを作るのに行き先が分からなくて一体どうやって作り上げるのだろうか。スクラッチのアプリケーション開発だからといって、全く何を作るかもわかないことなんてありはしないのだ。なぜなら、なんらか作ることを想定し、イメージを“仮置き”して作業を見積ったのだから。結果的に当初予定とは換わることがあるかも知れないけれど、それはプログレスで顧客の要件が変わっただけの話だ。


ワタシたちがどこに行くか。その精緻さは重要ではない。方向性を同じ目的を持つチームとして合わせたいだけなのだ。そのための遠足の栞。ワタシはその完成像に完璧さを求めたりはしない。それを求めることは愚でしかない。大事なことはぶれない程度にその全体像の概念を押さえるというシンプルな考え方なんだ。


いつ頃どこにいるのか
遠足の栞には、行程が書いてある。7時に学校に集合とか、10時に現地に到着するとか、そこから徒歩で山を登るとか。遠足の行程なんてちょーザックリでしかない。それは、移動を伴うから、仔細を決められないから。その上、その遠足を経験する子どもも沢山いて、引率する先生が思うように行動なんてしないものだ。


仔細は決められない。でも、遠足の目的は果たしたい。ならどうするか。行程でところどころで合わせるタイミングを設ければよい。何をあわせるか。それは、行く先々の場所と時間だ。これはプロジェクトで行ったら何になるだろうか。


そう、スケジュールとマイルストーンに他ならないんだ。いつにどの工程の終わりを合わせるとか、このイベントに合わせるようにタスクを集約する、とか。そうイメージするととっても分かり易いのではないだろうか。


ワタシたちが何時どこにいるか、時間軸に作業をプロットして、様々なイベントに合わせて進行することを表すものは、まさに遠足の行程なんだ。それが書いてあるのが栞。


おやつはいくらまで?
バナナはおやつ?くだものでいいだろうに。そうじゃなくて、おやつは、バジェットとすれば分かり易い。遠足に行いけばお腹がすく。だから、お弁当も持っていくし、休憩にはおやつが食べたくなるものだ。そしてその時間は楽しかった、ハズだ。


遠足に持っていくもので厳密に金額があるものは、おやつくらいかな。いまどきの遠足は、グループごとにグループ行動をとるような遠足もあるみたいだから、そういった遠足なら交通費もこの中に入るだろう。つまり、遠足に持ち合わせるお金はいくらまでで、その中で遣り繰りしないといけないということだ。


現地のグループでの移動も範囲があるから幾らでもってことはないだろうけれど何百円とか決めておくものだろうし、おやつも同じで上限だけ決めてあるものだ。交通費はその金額を持っていくだろうけれど、おやつは必須ではないから必ずしも持っていく必要もないし、上限の金額までを買い揃える必要もない。それは、遠足に必要な経費をどれだけ必要か考える場面があるということだ。


まぁ、おやつはお店で頑張ってピッタリにするんだろうけれど。


持ち物と約束
遠足の栞に書いてあるものの中で、必ずして欲しいことや持ってきて欲しいものが書いている。それがなければ遠足の行程で困るし、その栞をつくったときの前提が崩れてしまうので守ってほしいことを。ハンカチ、ティッシュ、現地の交通費、お弁当、水筒、おやつ...そして栞。


そういった持ち物などは、リュックにいれるときにチェックを入れるようになっていたりするものだ。それは、まるで、チェックリストだ。そうやって、集団行動をとる必要がある沢山の人の振る舞いをあるレベルで揃えるのである。


もう一つ、グループで行動するときの決めごと、何かあったときの連絡先、交通ルールを守る、周りの人の迷惑にならないように周囲に気をつけて行動する...そういった守ってほしいことがあるものだ。それは、システム開発では、標準やガイドラインなどとして示される。


プロジェクトは遠足である
ね、プロジェクトは遠足だった。だから栞が必要なんだ。そして一緒に遠足に行く人に「まずプロジェクトの全体はこうだ」と説明する栞があるとワクワクして臨むのだ。