後進育成のジレンマは蛇のように執拗に


アベノミクスになった途端、為替が反転しそれまでじっとしてた企業の投資もデフレで溜めこんだ内部留保を騙しに騙して使い続けてきた情報システムの更新に回るようになったのか、ものすごい勢いで仕事が回ってきているような気がするんですけれどどうでしょう。ただ、その仕事の条件も良くなったかと言えばそんなことはなくて、デフレで条件が厳しくなったままで、で。


仕事の引き合いが今まで以上に来れば優良物件から手を付けたいけれど、人的リソースのアサインは固定コストの低減へのプレッシャから早いもの順で割り振るから後の案件になればなるほどチーミングが厳しくなってきて、そのときにはじめてそれまでの人材育成への無作為が浮き彫りになるんです。


客観的に言えば、マネージャの分掌の一つが育成なのだから、配下の人的リソースが最大で売り切れたときを想定しつつ、ベテランや若手のアサインメントと最後まで残されたメンバの組み合わせをプロジェクトチームの個別最適化と担当しているチームとしての全体最適化をバランスしながらチーミングを考えないと最後に残ったメンバでチームを組むことが出来なくなってしまうことを想定するのは容易いです。ワタシはそれを無作為と言うんです。


エンジニアの育成レベル
マネージャ配下のチームメンバをザックリとエンジニアのレベルで分ければ、大体この3つのグループと5つに分別できますね。

手の掛からないエンジニア
のグループ
A)ベテランでプロジェクトマネージャが出来るエンジニア B)とても専門性を持っているエンジニア
手の掛かるエンジニア
のグループ
C)中堅でサブリーダができるエンジニア D)ベテランでプロジェクトマネージャができないエンジニア E)中堅で専門性を育成したいエンジニア
手を掛けるエンジニア
のグループ
F)若手で経験が少なく上位者の支援が必要なエンジニア


A)、B)やC)はアサインする予定のプロジェクトのスキルセットがマッチすれば全く問題はなくて、プロジェクトに対するマイクロマネジメントもそれほど必要がなくて、第三者の視点で気付いたことを尋ねれば大体は事はコントローラブルに進みます。
E)は対象となるエンジニアのタレント性も見て将来専門的な技術領域に進ませたい人が当てはまるのでその方向で育成するのですがついつい基礎スキルを蔑ろにしがちなので少し注意が必要です。
F)は早く一人前にしたいので、そういった機会をプレッシャ気味に与えて定期的にポーリングして成長と結果を実感できるようにしてあげればいいんです。


後進育成のジレンマ
ところが、D)はそうはいかない。D)をどう育成するかが問題なのです。人が集まり組織になれば上位20%が稼ぐとかとやかく言われますが、それはマネージャとしては易々と受けれられる理屈じゃないです。マネージャをしたことがある人なら10人いれば10人が全員仕事の条件に合わせて対応して欲しいと願うものです。ただ、そう簡単にいかないからマネージャはチーミングに悩むのです。


エンジニアも社会人になる年齢は22歳くらいでしょうからその人なりにスキルの基礎部分の根幹は出来上がっているものです。その基礎部分の根幹の上に、その組織で求める基礎スキルを敷設して、その上に専門スキルを構築することになります。先のA)からF)で言うところのE)とF)のメンバにどれだけ学ぶ機会を与え続けそれをトレースして育成を促して習慣づけることが必要です。習慣づけるのはF)の内にやらないとつまり先送りすればするほど人のタレント性が固まってしまうので育成コストが高くその効果は下がることになるので注意が必要です。


D)に分類されるエンジニアも全く学習して自己を育成する習慣がないのかと言えばここでも80:20の法則が働いて、ある一定の部分のエンジニアは育成シナリオに乗せることでそれまで意識しなかった自己伸長への取り組みをはじめられますがやっぱりE)やF)と比較してその育成コストは高く効果も期待とおりに得られることは少ないです。でも、当の本人が自分の成長を再認識するのでメンタル的な効果とそれを取り組む姿勢を他のメンバに見せることでの効果がありなかなか馬鹿にできないものです。


残るD)のエンジニアをどうするか
D)のエンジニアでも上位20%はエンジニアとして自分が何をすれば仕事で貢献出来るかを理解して、ゆっくりだとしても自分のスキルを伸ばそうと試みようとします。


しかし、其れにも入らないエンジニアの中には自分の今持つスキルがビジネスにどれだけ貢献しているか自己の評価も客観的にできるエンジニアは少なく、今の組織のビジネスの延長線上の仕事で貢献するための基礎スキルや専門技術スキルのどれを優先して学ぶかを意識してそれを伸ばすことに集中するか自分のふるまいの取り組みをしようともしないのです。


そうしたエンジニアは本当にエンジニアなのか、と疑いたくもなるのですが実在するのだからマネージャとしては現実を受け入れるしか仕方がないのです。エンジニアとして、その人のタレント性も考慮したうえで発揮できるパフォーマンスを出して欲しいと願うにしても、当の本人が立てるステージが目の前にあっても必要な準備をしないのであれば、舞台の前の方に立たせるわけにはいかないのです。



そういったエンジニアは、プロジェクトのリスクにならないようなロールに当てはめるしかなく、そうしてでも活用しなければならないのです。ただ、育成を全くあきらめるのかと問われれば、「ワタシは蛇のようにしつこい性格なので。」と自己伸長で成長できるように機会を与え続けるのです。