自社の経営に資する人材を知らないならシステムエンジニアは育成できない


SIerは、SEの育成をしなければ企業として先が無いのは今始まった事じゃないけれど、ユーザー企業の新たなニーズを聞き取り、技術を使ってニーズを満たす人材を育てる育成なんてしていないでしょ?


システムエンジニアを育成する大前提として
SIerも企業だから少なくと業界の成長率より1%でも上回って成長していなければその業界の中では成長していないということになります。これ、大切な一つの考え方。逆に業界がマイナス成長しているならそのマイナス成長より少ないマイナスならその業界の中では拡大しているということです。シェアでも経常でもいいけれど利益が無ければそもそもシステムエンジニアの人材育成の予算なんてつけようがないですから。


SIerが持つリソースの人物金の内、一番大きなウエイトを占めるのは人です。人的リソース。企業としては持つリソースを如何に活用=効果的に稼働させて一定量の稼働時間で効率的に収益を得たいと思うものです。一つポイントがあって、ただ稼働させればいいのでは誰でもできることで、如何に「効果的に」稼働させるか、です。人を効果的に稼働させるには人を動かす規定、ルールなどの制度設計やプロセスのデザインを頑張らないといけないんです。この制度設計やプロセスのデザインを後先を考え洗練している企業は稀なのは、制度設計やプロセスのデザインの教育を受けたり訓練するされている人も機会も少ないからです。


SEを育成するにはそうした企業のもつ育成に掛かる背景も一端として押さえておかないと単なる事業ポートフォリオの移動の選択をバズワードで惑わされ、結果、何も生まない投資だけが残ってしまうのではないかと思うんです。


ユーザ企業の新たなニーズなんて気にしてはいけない

技術者を襲う3年後の悲劇

多くのIT企業が、目先の巨大開発案件により生じた技術者不足への対応に懸命になる一方で、ユーザー企業の新たなニーズに応えられる人材の育成に無頓着であることが透けて見えてくる。


ユーザ企業の新たなニーズを気にしているようじゃそのSIerは世間の流行やバズワードを後追いしているだけなので今ではない近い将来消えてなくなるかもしれない。例え後追いでも生き残れるのは、企業として体力があってある程度の目鼻が利いてやはり始めたタイミングでリソースを投入して事業の体にできるSIerだけ。後からついていくSIerは既に先行者利益もなく価格競争の溶鉱炉に落ちていくようなもので、高い原価、低い利益の事業形態が変わることはないのではないかと思うのですよ。


引用の中で引っかかるのは「ユーザー企業の新たなニーズ」のところで、他人に合わせるためには先にSIer自身がある程度の確度でユーザー企業の新たなニーズ自体を押さえていることが先にあるはずで、それをしているなら何ら問題もないはずなのは、先にせんじて手を打っているからで、とするならば人材の育成には無頓着であるはずがないからなのですよ。


とすれば、ユーザー企業から新たなニーズを提示されて、ユーザー企業と一緒になって勉強代も払ってもらいながらSIerとして事業をさせてもらっている事業をしているSIerの事業自体が問題なんじゃないのかと思うわけです。


誰も保証しない数字に惑わされない

問題は、ユーザー企業の新たなニーズとのミスマッチである。開発・運用やSIなど従来型のビジネスについては、いずれも今後3年間に事業を拡大するとしたIT企業は5割前後に達するが、今後も利用ニーズが高いとしたユーザー企業は全体の1〜2割にすぎない。


こうしたアンケートの数字はあくまでもアンケート対象への設問の仕方でいくらでも変わることを知っていれば単なる参考情報でしかないことは誰も知っていることです。設問者が意図をもって設問をすることが出来るし、アンケートの回答者も占い師ではないので信ぴょう性が不確かなのは、3年後にその回答者が同じポジションでいる可能性も合わせて聞いてみればはっきりするのではないかと思うのです。将来のことを勝手に想像して外れてもだれも責任を負わないんですからそんなアンケートなんて何の意味も価値もない無味無臭の単なる占いの結果です。


だが、急速に高まりつつある新たなニーズに背を向けて、“人月商売”にあぐらをかいていれば、大変なことになる。3年後にはIT業界における人材のミスマッチが顕在化するだろう。その時に技術者を襲うであろう悲劇は従来の比では無い。


悲観的に書くことで新たなバズワードも育成企業への新規需要も喚起されるかもしれないけれど、そうした筋書き通りにいくかどうかはどうでもよいことです。それより、SIerはどうしてシステムエンジニアの人材育成をしないとけないのか、という話をした方が良いですよ。


ただ、いきなりSIer自身が自社のシステムエンジニアの人材育成をどうすればいいのかと考えるには、実はハードルがあってそれがあるために中々話が前に進まないのですね。例えば、どこのSIerでも、マネージャ、プロジェクトマネージャそしてアーキテクトの戦力が足らないと言われ続けているが一向に解消する気配はないし、解消したと聞いたことはないです。


そりゃ、定年とかでマネージャクラスのポストが空くとプロジェクトマネージャをマネージャにあてたりする玉突き人事をしていればプロジェクトマネージャが足らなくなるの当たり前で、その前に次々世代を育成しているのか?ってことになるわけです。で、していないから、いつまでたっても足らないわけです。システムは冗長設計できても人材育成の冗長対策はできていないわけです。で、そういうことを言うと確信を突いているようなことが多いようで、言われた方はムキになってできない言い訳をするんですよ。それを見て「はは〜ん、あたりか。」と思ったり。


話を戻して、人材育成をどうしたらいいのか考えるときのハードルとは、

「自社の経営に資する人材」とは何か


を理解し、定義し、それを得るための投資をしているのかどうか、胸にあてて振りかえさせればいいんです。大概、経営に資する人材を言えないし、それに対する投資も出来ていないですから。例え投資をしているとしても自社の経営に資するかどうかきちんと評価も改善もせずに続けているだけですから。そう言い切るのは、多くの育成が技術スキルに偏向していて事態とともに変わる技術を支える基盤の基礎スキルにほとんど手間を掛けていないからなのです。


ユーザー企業の新たなニーズを知るためには技術も必要だけれど、その前にシステムエンジニアとしてユーザー企業の担当者と意思疎通をしてニーズそのものを聞き出せないとどうしようもないし、それを聴き出せたとしても自社でその技術を保有していなければ速成するか外から買ってきて技術移転するなどのスピード感あるアクションを取れるだけのそれこそ柔軟に対応できるシステムエンジニアが必要なわけで。そっちはユーザー企業の新たなニーズには含まれていないということを何時認知するのかってことなんです。


そのエンジニアがコアとする技術を持っていることは大切なことだし必要なことだけれど、変わっていくユーザー企業の新たなニーズに応えられるのは、そのニーズに応えなければならないときに実現できる技術を使いニーズを満たす実装が出来るアイデアをだし、実装できるかどうかなんですよ。そうした人材を育成することをしているかどうか。技術スキルばかりではダメと言っているのはそれでは技術の利用スキルだからです。使うことは誰だって習えばできるようになるけれど、どの技術を使ってニーズを満たせるかは、それでは育成できないんですから。


もう一つ。システムエンジニア自身、自分をどう育成するかを自分で考えないといけない。企業が施す育成とシステムエンジニア自身が欲する育成は一致しないのだから。