基本設計で技術的に確立していなければシフォンケーキは膨らまない


要件定義で顧客の要件を洗い出し、実現する要求項目を業務要件とシステムで実現するシステム要件と分け、システムで実現する要件を後工程の基本設計や移行設計に進むことになります。


要件定義では一番粒度の粗い、業務のレベルでのアーキテクチャーデザインと文章での要件を表現するわけですが、その要件にはそれを定義するため想定した前提事項やその業務を制約する制限事項の上で定義されているのですよね。


乱暴に言うなら、要件定義は言い換えるとざっくりしたポンチ絵と何とはなくイメージできる言葉で書かれているだけで、じゃあどんな「しくみ」で実現するかまではパッケージなどのソリューションを適用するシステムなら最初から存在するので実現性も実現したときのイメージもデリバリするプロジェクトチームに経験があれば掴みやすいものです。その点から言えば、フレームワーク上でスクラッチでコードを書くような業務システムの場合はある意味どうにでもなっちゃうので出来るだろうけどどんなふうに出来るかは作ってみないとわからないというところがホントの所でしょう。


クラッチ開発のそれって、まるで道具はあるけど「how toはどうすればいいの。」ってことじゃないでしょうか。失敗プロジェクトを知る限り、失敗するのはスクラッチ開発ばかりじゃなくパッケージなどのソリューションを適用した開発でも失敗していることも多く見聞きします。


却って自由度のないパッケージソフトウェアの製品仕様を知らないで要件を定義してしまう危険を持つプロジェクトの方がQCDの観点で1つでもオーバーランして失敗プロジェクトの方が陥りやすいのかもしれません。


ところで世間にはタップリと空気を含んでいるのにしっとりとした天使の羽のような食感を持ったスイーツがあります。シフォンとは、


「薄くて柔らかな絹繊維」


の意があるとモノの本に記載されているのですが、なんとアメリカ生まれらしいんですねぇ。てっきりフランスかと思っていました。


唐突にしふぉんけーきの話を始めてどうしたんだ、って思うかもしれないけど大丈夫。大丈夫なハズ。だって、今日はシフォンケーキのブログ……じゃなかった。



シフォンケーキのレシピってグーグル先生に聞くだけで765,000件あるですけど。我が家にある本にもいくつもそのレシピが載っているわけですね。使用する道具と作り方、how toが。まぁ、当たり前な話です。だって、レシピだもの。


でも、料理をしたことがある人なら経験したことがあると思うんですけど、レシピに書いていある手順のそれ自体がイメージわかないときがあるんです。これの状態って、まるで作りたい完成の要件は定義されているし道具立てはあるけれど、その道具を使ってどうなったらいいのかがわからないということと同じじゃないですか。



引用 FORTNUM & MASON A FINE TRADITION OF TEA


これなんてキャロットケーキのレシピだけど、古典的な?レシピなんて完成図と説明だけのこんなものです。わざわざそれっぽいレシピ本をもってきただろう。ってですか。はい、これはお約束ですから。


じゃあ、日本のレシピ本なら、と期待したいところですが、以前この本のレシピでシフォンケーキを焼いたときやっぱりどうにも毎回期待する通りに膨らまない。



引用 dancyuセレクトレシピ51 魅惑のお菓子づくり


いや、勿論期待どおりに近く膨らんだこともあったんですが、どうにも毎回、とはいかない。どこがと思って萎んだシフォンケーキを頬張りつつ目を付けたのがこのメレンゲの工程です。メレンゲがどれだけ硬くなればいいのか程度がわからなかったんです。


矛盾を感じますよね。レシピ本なのにレシピ通りにやっている「ハズ」なのに期待する結果が得られない。これまるで要件として実現するシステム=シフォンケーキは定義されていて、じゃあとそれを実現する方式を決めているのに実際にインプリしたら「これじゃない感」なシステム=シフォンケーキができちゃった、みたいな。


まあ、経験不足というか技量不足なのですよね。それって、ツールやソリューションパッケージを担いだ割に実装できないエンジニアみたいじゃないですか。


でも、シフォンケーキは萎んでも食べられますけど、システムじゃあ動かなければ使い物になりませんから!!


技術的に確立するということは追検証できるということです。言い換えると再現できる手立てがあるということです。なければそれを作らなければならない。それが上流工程の検証だったりします。



引用 シフォンケーキ21のバリエーション


ワタシが知りたかったのは、ひっくり返しても落ちないくらいな硬度を持つメレンゲの状態で、そのためには何分くらいハンドミキサーを使って泡立てればいいのかという手順でした。実際は、この目安の時間の2倍は掛ける、ことで膨らませることが出来るようになりましたが。


ここもポイントで、レシピ本の仕様を信用せずに実地検証が必要ということです。出なければ、ホントに膨らむとは自信を持って言えませんから。


上流設計、それも基本設計でコアとなる技術は確立しておきましょう。しっとりと天使の羽のようなシフォンケーキを食べたいなら。

シフォンケーキ―21のバリエーション
下井 佳子 杉山 一夫
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A fine tradition of tea
A fine tradition of tea
posted with amazlet at 14.10.26
Janie Suthering Rosemary Moon
Fortnum and masson