悩むより魔法のステッキに自分の声を聴く方が良い


プロジェクトに携わっていると、その役割がプロジェクトマネージャであろうが、担当エンジニアであろうが、はたまた、マネージャであろうが自分の思うようにコトが進まないことばかりです。でも周りを見ていると、上手く自分の思うようにやっているような人もいるのですよね。で、自分の思うように出来る、出来ないはどこで差がつくのでしょうか。


もうずっと昔、20年くらい前の遠距離プロジェクトのことでした。3つのサブシステムからなるシステムの一つのサブシステムのリーダをいつの間にかやることになっていました。当時、20年以上も前のことですからサンマイクロシステムズやDECなどのエンジニアリングワークステーションが分散システムの花形のときです。そうそう、NEWSというブランドのソニーのEWSもありました。


遠距離というのとまだ当時のビジネススピードは今のような速さではなかったので週次で往訪して、コトを決めて、決まらなければまた来週、宿題が出てもまた来週、なんていうあっという間に1ヶ月が経ってしまうようなスケジュール感覚でした。なんと悠長と言うか、ほんわかというか。


ある帳票があって、その仕様を決められるのはその帳票を使っているユーザで、それまで機能仕様を詰めてきたシステム担当のひとではない人が決定権を持っていると教えてもらったので会ってみると人のよさそうなお父さんでした。ううん、当時50歳代じゃなかったかなぁ、想像だけど。


で、帳票の仕様を決めるべく、現行仕様と新システムとのデータのリポジトリから紐付けをして新帳票の仕様を決めに掛かるんですが、1回目は仕様の提示で終わり、2回目ははぐらかされて、3回目にも決められないと逃げられてオフィスに戻って日程をにらめっこすればヤバいことは誰の目にでもわかるってものです。はい。


この状況は結果的にはプロジェクトマネージャにも他の誰かに相談することなく、いや、相談するなんて思いもしなかった、が正しいかもしれないですけど、次の往訪時にどうしようかと悩んで考えたんです。

  • 自分の声を聴く
  • 自分の望みが受け入れられるかは考えない
  • 話す前から妥協することを考えない
  • 交渉する相手は一人ではない


若かったですから、余り後先を考えずに得たい結果だけに注力していたのかもしれません。


でも、自分がどうしたいかがコトの本質だし、自分の希望を受け入れるかどうかは相手なのだから相手に主導権の領域を悩んでも仕方がないし、相互に思いがあるならそれをお互いに並べてそこから話をすればいいし、もし決着がつかなくなったとしても他の権限を持つ人を探せばいいんですよね。


でね、次の往訪時に行くとやっぱり「決められない。」と言うんです。そこでワタシがどういうアクションを取ったかと言うと、

「今日はやりじまいにしましょう。この帳票の仕様を決定するまではワタシも帰れません。」


「やりじまい。」は顧客がこちらの作業が遅れているときに揶揄して使っていた言葉です。他のメンバがサーバなどの設備据え付けで言われていたと言っていたのを思い出して、「そのくらい腹を決めて今週は来たんですよ。」という気持ちを前面に出して「決めましょう!」と。


それまではどちらかと言うとお伺いモードでしたから、ユーザもビックリしたと思います。だって、目が真ん丸になっていたのを今でも思い出せますから。まぁ、それからユーザさん、真剣に考えてくれました。電話もしていましたし、システム担当の人に相談もしていました。「どうしよう。」「決めてください。」とかだったかな。システム担当の人も「こんな帳票1つくらい早く決めてくれ。」と思っていたかもしれません。


結局、予定していた会議の時間を若干越えて帳票の仕様は決定したのでした。いつものことながら、新幹線の予約時間は変更したのですけど。