メンバを変えずにチームの技術転換を進めるために

チームは同じなのにビジネスの実績や見通しからチームに対して技術領域の転換を図らなければならなくなることがあります。技術領域の転換は外的要因が起因する場合もありますし、内部の事情が起因となる場合もあります。外的要因の場合はオンゴーイングのビジネスが不振となった結果、規模を縮小したり、撤退するような判断に至ることもあります。内部要因の場合は、他部門への集中によるリソースの移転などがあげられます。内部要因のケースでは、他部門からの半ば強制的なファクターによるケースもありますが、チームが自発的に技術領域の転換を図るケースもあります。

これらのケースは、単純化すれば内外を問わず他者から転換を強制的に働きかけられるケースと自らが自発的に転換を試みるふたつのケースに大別できます。

チームとしての技術領域の転換はその領域が一部でも大部分でも取り組むためには相当のパワーが必要です。ただ、その転換を図るためのパワーは他者から強制されるよりは自発的に取り組む方がハードルは低いものです。なぜなら、他者から強制的に技術転換を図るように求められる場合は到達しなければならない目標値が他者により決められるからです。一方、自発的に技術転換を図る場合は、転換の目標値をチームで設定できる裁量を持っていますから、目標を達成するためのハードルの設定の柔軟度は高いのです。

チームが技術転換を図る場合、技術転換に掛けられるリソースは、チームが持っているリソースに限られるのが一般的です。リソースには人的リソースはもちろん、バジェットや時間も含まれています。

限られたリソースの中でチームの技術転換を図るためには試行錯誤はするとしてもフィージビリティスタディを実施したり、期待する結果を得られそうかどうかの評価をすることになるのですが、技術転換の目標と照らして方向性の一致やズレの修正のためにも小さな単位で計画し、実行と実績の評価のサイクルを回す必要があります。

チームのメンバに対しては一人ひとりが持っているスキルとレベルを明示的且つ定量的に評価した上で、転換する技術領域へ誰から先行させるかなど、検討することが必要です。この検討の際には、転換する技術に類似する技術を全く持っていないメンバよりは、近しい技術などの土地勘を持っているメンバを先行させるようにするとチームとしての技術転換という目標を達成する可能性が高められることができます。全く縁もゆかりもない技術領域のメンバを選ぶことは、技術転換という達成しなければならない目標を未達にしてしまう不確実性だけを自ら高めてしまうのです。

これを念頭にすれば、チームの技術転換を確実に進めるためには、先行するメンバと技術的なキャッチアップをしながら転換を図るメンバの二つに分け、先行するメンバが後続メンバをサポートする体制も同時に構築する必要があります。これらを一切考慮せずに技術転換を進めてしまうと思うように転換の進捗が得られず、ネガティブに取り組まれてしまいかねません。

技術転換に取り組むということは、現状の環境を変えるということです。場合によっては、転換を判断した時点で持っている技術をチームに捨てさせる判断をするということです。安定していたチームを技術転換という取り組みでメンバに対して物理的に、精神的に揺り動かす働きかけをするのですから、不安定になるチームのメンバの持つスキルを生かし切ることをしなければ成功しないでしょう。