社内転職のススメ


「これまでどんなプロジェクトのプロマネをやってきたんですか」
「そうね、パッケージを使った基盤システムとか、わりと多いいかしら」
「ずっと同じ部署でしたっけ」
「えっと、社内では珍しい方だと思うんだけどいろいろな部署を経験しているわ」
「たとえばどんな部署ですか」
「製造業や金融だってあるしインフラだってやったわ」
「開発部署総ナメですね」
「勝手に会社が人事異動を出しているだけよ」
「自分から希望したことはありませんか」
「どうだったかしら…そうね、1回あったかも」
「それを聞いてもいいですか」
「あるプロジェクトの応援に行っていたら、そこのマネージャからお誘いを受けたから、かしら」
「腕を見込まれたんですね」
「どうかしらね、気が合ったのは確かだけれど」
「気があっただけで決めたんですか」
「それって大きいと思うわよ」
「そこで気があって、お誘いを受けてどうやって異動にこぎつけたんですか」
「異動は相思相愛でないとミスマッチを起こすのよね。そのときは先にプロジェクトに参画していたからそれはパスしていたわけ。あとは、ほら、希望調査があるでしょう。それを出すからよろしくお願いしますと言っておいて、受け手のマネージャに手を挙げてもらったのよ」
「なるほど。もし受け手がなかったらどうなっていたんでしょうね」
「希望する部署には行けなかったでしょうね」
「社内だから、出る部署には喜んで送り出して欲しいし、受けれてもらう部署には歓迎して欲しいと思うのよね」
「変な噂がたっても嫌ですものね」
「まぁ、そうなんだけど、気を使ったのは異動先での仕事ぶりが異動元の部署やマネージャの評判になるから、って」
「そんなこと思う人いるんですか」
「いるわね。人は自分が思っているより批評をするものよ」
「その人を異動先のマネージャが評価すればそれでいいじゃないですか」
「そうなんだけどね、それぞれでいろいろ言いたいことはあるらしい、そういうことね」
「それで異動してからどうでしたか」
「大変だったけれど、そのプロジェクトは大成功だったわ。お客さまからも褒めていただいたから」
「異動したことも成功につながりましたか」
「異動することで責任の所在がはっきりするじゃない。ちょっと誤解を与える言い方だったかしら。応援でも責任はあるけれど、ビジネスオーナーの部署のメンバになるということは終わりまで面倒を見る、という意味でね」
「あぁ、そういうことですね」
「もう、わたしのプロジェクト、わたしのサブシステム、になるのね。だからトラブルが起きれば先頭に立って解決するまで旗を振るの」
「なんとなくわかります」
「だからね、今いる部署で問題を起こして異動していくケースを聞くとちょっと残念と思ってしまうのよ」
「そうですね。何か問題…たとえば希望する仕事と違う場合はどうしたらいいでしょう」
「少なくとも所属するマネージャはいい気をしないものよ。なんでだ、って。何が嫌なのかって。そう思われないようにはしておいたほうが良いと思うわ。今いる部署も仕事も嫌いじゃないけれど、具体的にこの仕事で挑戦したいことがある、とかね」
「ポジティブに伝えると」
「そうかも。それと会社のビジネスの目標と一致させておくことも工夫しないとね。大義名分を持っておくことね。偉い人から見たらそれを阻むマネージャのほうが怒られるわ」
「選択肢を持たせない…腹黒い」
「人事はひとごとだから、そのくらい仕込んでおかないとね」
「あと何かありますか」
「受け入れる部署に人が増えても耐えられる体力があることね。これ確認しないで希望しても絶対通らないわよ」
「それはそうですね」
「だからね、たとえ今の職場や仕事が気に入らなくてもいきなり転職を考える前に社内で異動を考えたほういいのよ。社内転職は社外で転職する練習にもなるわ。自分のやりたいことを真面目に考える機会になるなら」