難局を迎えないプロジェクトマネージャを評価できるマネジメントは少ない


仕事は準備8割とか言いますよね。ワタシは9割、いや、9割5分くらいではないかと思うのですけど。なので行き当たりばったりやノープランの仕事ぶりを見ているととても不安になります。あれは大丈夫かな、これはどこまで考えているのかな、と。


炎上して、大騒ぎをして、多くの人を巻き込んで、場合には持ち出しまでしてプロジェクトを終わらそうと奮闘しているプロジェクトを見かける機会のあるたびに、

「炎上させる前にやるべきことをやってきたのかな」


と思うわけです。

・契約内容を確認する
・プロジェクトに必要なチームのスキルセットを把握する
・キーとなるリソースから確保する
・プロジェクト計画を立てる
・スケジュールの妥当性を検証する
・チームを立ち上げる
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どれも、こう書かれたら「当たり前ですよね」としか反応できないと思うのですが。でも、その当たり前のことをやらないプロジェクトマネージャが少なくない。


結果、炎上させて難局を自ら迎えてしまう。


若い頃、参画しているプロジェクトマネージャがこう言っていました。

「エレガントに作る必要はないよ」


いや、当時のワタシにエレガントにものづくりをするほどの実力はありませんでしたが、ひとつの気づきを与えてくれました。要件を満たせばいいのだと。


そのあと、PMPを取るための講習を受けたときに「金メッキ」をする必要なない、ということを知ったとき「アレのことか」と10年も前に聞いたことが結びついた瞬間でした。


当たり前のことをプロジェクトマネージャが当たり前にやらないプロジェクトチームは、往々にして同じ振る舞いをします。やらなければならないことをメンバがやらないのはプロジェクトマネージャがやらなければならないことを指示していないからです。だから、好き勝手やる。ものづくりには手をつけるにしても順番があるものですが、関心を持ったものから手をつけたり、局面で書くレベル以上に詳細にドキュメントを書いたり、感じんなことを後回しにして時間が足らなくなったりするのです。


こうしたノーコントロールな状態は、プロジェクトマネージャがプロジェクト全体のシナリオを描き、具体的なプロットに落とし込み、地味な手間の掛かるプロジェクトマネージャがやらなければならない「作業」をしないから起きるのです。


マネジメントからは日々のそうしたプロエジェクトマネージャの仕事ぶりを見ることはほとんどありません。プロジェクトをプロジェクトマネージャにデレゲートしているのですから。プロジェクトのresponsibilityはプロジェクトマネージャですから。


マネジメントには、計画どおりに進んでいれば、相談することはほとんどありません。ステコミを開いても「順調ですね」「今後もこの調子で」で終わっていまいます。一方、炎上させるプロジェクトマネージャは自分の不作為に気づきもせず、様々なリクエストを要求し、周りを巻き込んでいきます。そして、頑張っている印象だけが残る。


もし、もともと受注した案件自体がやばいのであれば、計画時にプロジェクトマネージャとしての見通しを見切って計画時点でプロジェクトの成り行きを示さなければならないのです。


プロジェクトのリスクが計画時から知っていれば、それを見込んで先に手を打てるのですから。そのことにより、プロジェクトの損失を最小限にしたり、契約変更をしたりする方向に導く一歩になるのです。


どちらのプロジェクトマネージャを評価すればいいのか尋ねるまでもありません。responsibilityを果たしているプロジェクトマネージャを評価しなければなりません。


ただ、そうした評価軸を持っているマネジメントは多くありません。


それでも、プロジェクトマネージャは自分の持ち場で自分のプロジェクトを炎上させず、ざわつかせず、平常運転でキャリーした方が何倍もましです。