センパイとお菓子とチームの立ち上げと

「センパイ、今いいですか」
「ん、何かあった」
「嫌ですね、まだ何もやらかしていませんから」
「また何かやったのかと思ったよ」
「ひどいじゃないですか」
「だっていつもいつも謝ってばかりじゃん、オレがお客さんへ」
「それは言わないでください、故意じゃないんですから」
「故意だったらさすがに怒るよ、オレだって」
「だからもう」
「それでどうしたんだって」

「チームを立ち上げるときには何に気をつければいいですか」
「どうしたのチームの立ち上げだなんて」
「ほら、全社で若手のシステムエンジニアを集めて活動することになったじゃないですか」
「そんなのあったっけ」
「イントラにも出てましたよ。それにこの前、朝会のあとでもちょっと話したんですよっ」
「あーそうだったそうだった、ちょっとだけ記憶が」
「絶対ウソですね、その顔は。すっかり忘れていたんでしょ、どうせわたしのことなんか」
「そんなことないって、ほんと、ホント」
「まあいいです、ケーキセットで」
「なんでいつもこうなるんだ…」

「それで、何に気をつければいいんですか。チームの立ち上げ」
「そうなだぁ…。何に気をつけるつもりでいるのさ」
「センパイ…質問に質問で返すのってダメだといつも言っているのはセンパイですよ」
「ああ、ごめん。何がわかっているのか先に聞いておこうと思ってさ」
「そういうことならいいですよ。えっとそうですね、お菓子持っていく、ですね。おかし食べながらおしゃべりして仲良くなるのが一番ですよ」
「まあ、それもあるけどさ。じゃあ、お菓子なしなら」
「それはツマラナイですね。お菓子がないと。お菓子なしか…えっと、どうしよう」
「何も考えていないだろう、本当は」
「考えていますってば。えっと、ええっと。そうそう、気をつけること。目的ですよ。目的」

「いいじゃん、目的。他は」
「え?ほかにもですか…ほかに気をつけること…立ち上げで…ほらQCD。そうQCDですよセンパイ」
「ちょっと目的と被るけどいいか」
「いいんですよ、出すことが大事なんですから。じゃあセンパイは何を気をつけるんですか」
「ん、そうだなぁ。集まる人はみんな知り合いなのかい」
「名簿見たらあまり仕事で関わりない人が多いみたいですね」
「そうか、じゃああるなぁ」
「なんですかそれは」
「人を知ること、かな」
「人を知る、ですか。お知り合いになるってことですか」

「そうじゃなくてさ、性格を知る、みたいな感じかな」
「性格判断するんですか」
「わざわざ性格判断するんじゃなくて、会話の中で知るんだよ」
「なんか、高度な技ぽいですね」
「会話していればだいたいわかるよ。好奇心が強いかどうかとか、心配性かどうかとか。あとは依存度が高いとか」
「そうなんですか」
「だいたい、あたるし。そういった性格は裏返して読んだりそれの強弱で組み合わせてみたりするとね、まぁ、外れない」
「でも、どうして性格なんて知ろうとするんですか。趣味悪くないですか」
「相手の性格がわかれば気持ち良くコミュニケーションできるじゃん。そのため」
「なるほど、センパイって実は氣を配る人なんですか」
「気づいていなかったのかよ…」