システムエンジニアも知っておくべき民法改正後の請負契約と準委任契約


システムエンジニアが経験を積んで避けて通れなくなるのが法律です。いま、まさに動いている契約の内容をどれだけ知って意思決定に考慮しているか。法規の、契約の中で約束を履行するために必要な知識が法律です。


そんな契約でよく聞くワードが「請負契約」と「準委任契約」ですね。請負とは、ある仕事を完成することを約し、とあるので、完成できる約束をする、と言う意味ですね。完成できる見込みがないのなら請け負えない、ということになります。

(請負)
第632条
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
引用 民法第632条 - Wikibooks


請負契約と共連れで言われるのが「瑕疵担保責任」ですね。納入後の相当期間を定め、とありますがよくあるのが引き渡し後1年間というのですね。その間にバグが出たら無償で対応するように請求することができる、と。ただ、但し書きがあるように瑕疵が重要でないバグで改修の費用がかかりすぎる場合は除外されます、と。

(請負人の担保責任)
第634条
仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第533条の規定を準用する。
引用 民法第634条 - Wikibooks


上記の請負と対比されるのが準委任契約ですが、これは、法律事務の委託に準ずる行為なので、元は、法律の事務委託の法律です。

(委任)
第643条
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
引用 民法第643条 - Wikibooks


(準委任)
第656条
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
引用 民法第643条 - Wikibooks


実はここまでは現行法規のおさらいで、ここからは民法改正がなされるとどうなるか、というケーススタディです。
元ネタは システム開発の契約が民法改正で変わる です。



変わる瑕疵担保責任
瑕疵担保責任で「代金減額請求権」ができるようになると、受注側が支払う代金の減額を請求できる」ようになります。これにより、工程終了の確認が強まるでしょう。

発注側 発注した成果物が要求を満たしているか、受注側に対して品質管理を強めるでしょう。
発注者内部でも内部監査が強まる可能性が有ります。
受注側 受注側は工程終了ごとの成果物確認を強化することで後になって代金減額請求権を行使されることを予防するでしょう。
同様に受注側内部の監査が厳しくなるでしょう


ここで現行の曖昧な請負契約=偽装請負をしているような契約は、施行時には見せしめで取り締まり強化されることが想定されるので、改正を見越した契約の見直し、または、履行を前提とした契約に改めないと監督省庁のいい鴨にされそうです。


「賠償請求の起算点」の変更は、上限が引渡しから最大5年以内に延長されるので、いわゆる作ってバイバイ、のようなビジネスモデルの受注者はビジネスモデル自体を変更しないと危ないですね。


引き渡し5年を含めた、開発後の維持管理を契約に含めて契約することを前提にするでよう。もちろん、維持管理は準委任で、ですが。これは、一度契約をしてしまうと維持管理までを範囲にしてしまうので、ベンダのロックオンが進むでしょうし、ウィンバックされたときにロスしたベンダはひやひやものになるので、そういった時の対策を契約の条項に入れるでしょう。


「プロジェクト中断でも支払い義務」の追加については、これまでの判例にあるように部分的な請求が認められたこともあり、現状に民法が合わせたものと解釈ができるでしょう。


改正後の請負契約は大手ベンダーのような契約で発注側と条項について戦える専門部署を持っているとこで、且つ、プロジェクトの実行部隊の成獣度が高く、プロジェクトに対する監査体制が持てる体力のあるベンダに限られると思われます。


変わる準委任の支払い条件
準委任契約は現行のものと、新規で追加される契約形態になります。

「履行割合型」は、従来の労働期間に対して報酬を支払う契約です。いわゆる、人出しの契約はこちらですね。改正後の完成を約せない請負契約は、こちらに流れてくるでしょう。ただ、発注側は、次の成果完成型で契約をすることを要求するでしょう。


「成果完成型」は、新しく追加される契約形態です。発注側からの委任される事務の履行により得られる成果に対して、報酬を支払う契約になります。つまり、瑕疵担保責任がない請負契約みたいなもの、のように思えますが、実際に施行されるまでにそこあたりは説明があるのでしょうか。


曖昧な請負契約は、ほとんがこちらに流れてくると思われます。なぜなら、委託した事務の成果が得られなければ、支払い義務はないためです。暗黙に、履行を迫っていると思えるような契約を取りそうですが…。


中小のベンダは準委任契約の「履行割合型」の契約を求めるでしょう。これまでのビジネスモデルの延長なので。ただ、発注側は「成果完成型」を強く求めるでしょうねぇ。


何れにしても、受注側は契約、プロジェクトの実施において、いざという時に戦える条項とエビデンスを日々蓄積できる知見者がいないとこれまでどおり負けるでしょうねぇ。


システムエンジニア向けの法律に関する書籍はこのあたり、でしょうか。付録か本編にズバリ載っています。