センパイは、背中を見せて学ばせるより、自分の本棚を貸して育てよう
「センパイ、私どっちの方向に進めばいいんですか」
「興味あることを手当たり次第やっておけば」
「なんですか、その適当さ加減は」
「なら、システムエンジニアの教養科目全部やっておけ」
「そういう言い方も無責任ぽい」
「キミがどんなプロジェクトに入るかなんて誰も知らないんだからさ」
「そうかもしれないですけど後輩がこうやって聞いているですよ、親切に教えるのがセンパイの役目ですよね」
「そうだよ。だから、教養科目をひととおりやっておけば、と言っているの」
「センパイなりに考えているんだ…。それでその教養科目ってなんですか」
「PMBOKや技法などの方法論、NWなどの技術的な仕組みがわかる概論、アルゴリズムなどのプラクティスがひとつ」
「ひとつ目から多い」
「二つ目は、マインドセット、交渉力などの基礎スキル」
「どっちもですか」
「どっちも」
「で、どれからやればいいんですか」
「だから、興味あることからだってば」
「なんですか、その適当さ加減は」
システムエンジニアとして勉強したことがすぐに役たつかどうかは、今、目の前にあるタスクを片付けるのに必要なことを今学ぶかどうかだけの話で、そうでなければいつ役立つかなんて誰にもわかりはしません。
だけれども、技術的な学習と基礎スキル的な学習を横に並べてみたときに共通しているものがあるんですね。それなんだかわかりますか。
技術的なスキル | 基礎的なスキル |
これをこんな風に切り口を変えます。
技術的なスキル | 基礎的なスキル | |
時代で変わっていくスキル | プログラム言語やツールのスキル | n/a |
変わらない考え方 | 技術的な概念のスキル | 交渉力・コミュニケーション力・問題解決力など |
1行目は、道具ですね。2行目は概念、考え方です。
センパイはこの2行目を勉強しておけばいいんじゃないの、と言っています。なぜなら、会話でも出てきたように将来どんなプロジェクトにアサインされるかがわからないからです。
でも、ものの考え方や基礎的な知識はどこでも必要になりますし、基礎が分かっていれば、応用を後追いで身につければその分早くたどり着けるわけです。基礎がなければ、経験で得た知識しかありません。それも自分で整理していなければ、暗黙知でしかありませんし、体系的な知識のどの部分を持っていて、どの部分を持っていないかさえわかりません。だって、全体を知らないんですから。
例えば、数字に強くなることも次第に必要になります。一覧を見て数字を理解したり、おかしいところを一瞬で見分けたりする力が必要になる時期があります。キャパプラなどはそのひとつですし、プロジェクトマネージャのコスト管理もそのひとつです。
でも数字はとっつきにくいですね。いきなり複式簿記をやればだいたいわかるよ、と言われても「複式簿記ってなにそれ美味しいの?」ってなる人の方が多いかもしれません。それは技術だって同じなんですけどね。
でもですね、複式簿記というか、会計の基礎がわかるとコスト構造が見えてくるんですね、プロジェクトの。プロジェクトマネージメントの一つにコストマネジメントがありますが、なぜコストマネジメントがあるかが会計の知識があるとより理解が早まると思うんです。
単純に、プロジェクトの経費をコントロールする、という表面的なことではなくて、期間に計画した成果が計画通りに得られれいて、且つ、計画した品質であるかどうか、これらの状態に対して投下したコストが多い、少ないで、プロジェクトが完了するまでのコストがどのように推移して、総額がどのくらいになるのかという予測につながるように見通すわけです。
そういう意味で、会計的な概念がプロジェクトマネージャに必要になるんですね。ただ、ここに興味を持てる人がどのくらいいるか…。
その興味があるかどうかのリトマス試験紙がこれでわかるんじゃないかな、と。漫画ですが。
まぁ、それで手当たり次第読むのは良いんですが若者はお金も限られますから、センパイの本棚を借りることをお勧めします。
「じゃあ、センパイのお勧めの教養科目の本を貸して」
「えぇ、教養科目の本なんてまだ取ってあるかな」
「探してきて」
「まあいいけど。どのあたりを読みたい」
「それも考えて」
「キミがなにに興味を持っているかなんてわからないよ」
「じゃあ、2−3冊持って来ればいいじゃん。いつもアイデア出すときに案を複数考えて、っていうのセンパイなんだけど」
「しょうがない、じゃあ持ってくるよ」
「期待してますよ、センパイ」
「おかしいな、オレが貸す側だよなぁ」