『いいですね』から話せば伝えたいことを聞いてもらえる

あるチームは年齢層が高く、それぞれの専門性が尖っていて、何か裏も取らずに言おうなら「素人なのですが、その○○については…」と例の物言いで始まるのだ。気が抜けない。実際はそんなニュアンスで、なのだが。

そういった中で学んだことがある。その学びを実践できるようになるまでには、随分と時間がかかったというか、時間掛け過ぎじゃないかと思わなくもないが、それでもやはり、学びを実践して上手く使えるようになるとニンマリとしてしまう。

自分の考えと違うことを言っているときに

 仕事を任された以上、自分の経験から満足できるアウトプットをしたいと考えるだろうし、実際、自分の裁量で資料のレイアウトや自分で考えた流れに言葉を選び、資料を作っていると思う。

コードもこれまで経験してきたやり方や、やってみていい感じのスタイルで処理を書いていると思う。

そうして持ち寄った資料やコードを説明したり、レビューにかけたりしていると思う。

さて、メンバが作った資料が自分の知見から言えば、ああした方がいいとか、こうした方がいいと思ったとする。

「○○さん、それじゃダメですよ。そこはこうしないと」

せっかく、自分の意見を言ったのに、反応が悪い。なんか他のメンバも微妙な雰囲気に感じる。なぜだ。自分は自分の経験から『良い』と思ったやり方を教えただけじゃないか。結局、自分が意見したコメントは受け入れられなかった。

なぜだ。

自分の意見が受け入れられない

 エンジニアなのだから、議論するテーマについて自分の意見があれば、それを発言するのはチームのためにもなると考えるのは普通のことだろう。

実際、それそれのメンバが経験して持っている経験知を共有することで、他のメンバがその知識を使ってくれれば、同じ技術レベルに近づくだろうし、逆のシチュエーションになれば自分の勉強にもなって、それこそ、メンバ同士で相乗効果が生まれるのだ。

では上記の会話でなぜ意見が受け入れられなかったのだろうか。

自分が経験してきた中で、より良いと『思った』意見を伝えたいままに受け入れられるケースと上の会話のように受けれらないケースがあった。それが今は大体の意見が好意的に受け入れられるようになった。

聞く耳を持てない

それまで、つまり、学んだことを思うように、自然に振る舞えるようになったのは、最初の一言を変えてからだ。

「こんなスケジュールで進めようと考えています。何か意見ありますか」

「そんなスケジュールじゃダメですよ。このケースはどう考えているんですか」

 つい、こんな風に言いがちだけれど、こう言ってはいけない。言っていることは間違っていないが、こんな風に言われたら気持ちよく受け入れてもらえるわけがない。

立場を入れ替えてみよう。半日かけて書いたスケジュール案をいきなり全否定されるわけだ。素直に聞く耳を持てるだろうか。

さらに、自分が考えたスケジュール案に対して、足らないことを言われるだけで、じゃあ具体的にはどうすればいいかと質問に質問で返したくなる。肝心のアドバイスも全くないのだから。

こんな物言いをされても素直に意見を聞けるのは相当の熟練者か、成果しか信じないツワモノのエンジニアだ。

マジックワードを使う

 自分が学んだことは、ある意味マジックワードを手に入れたことに近い。もし、自分と意見が違う時にはこんなマジックワードを使う。

 

「こんなスケジュールで進めようと考えています。何か意見ありますか」

「いい感じですね。そうだ、○○はどこに入っているんでしたっけ」

 

マジックワードと言う言葉を使ったが、大したことは言っていない。ただ、この言い方をすると100%は言い過ぎかもしれないが、指摘したことは必ず入れてもらえるようになった。

二つの違いは何かを言えるだろうか。

「そんなスケジュールじゃダメですよ。このケースはどう考えているんですか」

「いい感じですね。そうだ、○○はどこに入っているんでしたっけ」

単純なこと過ぎて返って気づかないかもしれない。シンプルで単純な構造の方が気がつかないものだ。

前者は『否定』から入る。それも全否定だ。後者は『同意』から入る。それも労いが感じられる。

でも本質は、そのあとの文章が受け入れらるかどうかだ。足らないケースを反映させることが発言の目的なのだ。だから、『このケース』を反映してもらわなければ発言した目的は達成できない。

後者はどうだろう。『○○は』と欠けているものを具体的にしているのは同じだが、考慮されているだろうけれど、記載を忘れているのか、書き忘れか。どちらにしても考慮されているんだよね、と確認しているだけと受け取れる。

後者は実際、考慮漏れだったら、素直に『あっ、忘れてました』と反応するだろう。考えていたとしても書き忘れていたら素直に『ありがとう』と言えると思わないだろうか。

 繰り返すことになるが、発言する目的は言ったことに対して聞く耳を持ってもらい、それを実行してもらわなければ発言した意味をなさない。

マジックワードを使おう。

 

あなたソレでいいんですか(1) (イブニングKC)

あなたソレでいいんですか(1) (イブニングKC)