オフィスのフリーアドレスはリビングダイニングに勝てない

約10年くらい前のプロジェクトのあったフロアはフリーアドレスで、そのときはそういうものだと思っていたが、よくよく思い出すとデメリットしか思い出せない。結局プロジェクトだからプロジェクトチームは近い席に集まるのでフリーアドレスの意味がない。あと、自分の席ではないから机の上の掃除をしない。使用頻度の低い場所には埃が溜まっていた。

約10年経ち、別のサイトもフリーアドレスになった。フロアをざっくりと部門で括ってはいるがフリーアドレスなので実際は誰もそんなことは気にしない。前回見たときには左のフロアにいた人も今回は右のフロアに居たりする。見えないルールは守られない。

そんなことだから、誰がどこにいるかさっぱりわからない。さらに拍車を掛けているのは働き方改革でOA環境を式年遷宮のように全面的にリプレースしたため、どこでもオフィスを人事部門が積極的に推している。OA環境自体をリプレースして使いやすく、オンラインでコミュニケーションを取れるようになるのはとても良いし評価されることだ。ただ、それはコミュニケーションをそれ以前より良くしたいという課題があったからである。

ところがどうだろう。以前は、部門を跨いだコミュニケーションを取りたい、コミュニケーションを取りやすい道具を共通基盤として入れて欲しいという課題があったのだ。その回答は、オンラインでのコミュニケーションツールの刷新とどこでも働ける環境である。

一見良さそうに見えるが、失ったものもある。それは、あそこに行けば会えるという会いたい人に会えるスポットが消失しているのである。

結局、バックオフィス、経理、事務、総務、人事などはフリーアドレスであるにも関わらず席を固定化している。

また、プロジェクト化するとプロジェクトチームは近い場所に集まる。いや、集めるというか。ニアショアや持ち帰り開発や在宅は除いて。

実は、少しフリーアドレスに期待して居たのである。旧態の固定席は息が抜けない。考え事をしたくても、前後左右の会話が耳に入ると気になることも多い。それはそれで情報を把握するという意味で大事なことなのだが、一人になりたいとき、集中したいときもある。

隠れるときは人混みである。そうした期待があったのかもしれない。

結局、どこで仕事をしているかというとオープンスペースのソファに陣取っている自分がいる。

この風景を毎日別のところで、同じことをしている。それは自宅のリビングダイニングなのである。部屋はある。そこで一人になれる。でも、集まる場所に居座るのである。

多分、固定席に対する毛嫌いの理由は収納効率しか考えられていないゲージ状だからなのだ。会議テーブル一卓くらいのスペースがあれば固定席も随分と環境は良くなる。

ただ、オープンスペースや個室も必要なのである。

広い固定席、寄り集まれるオープンスペース、集中できる個室、プロジェクトルーム。

集約すれば、個室とリビングダイニングの2種類は必要なのである。そうしたコンセプトのオフィスで働きたいと思うので、シビル関係各社はそういったコンセプトのデザインを広めて欲しい。

 

 

新版フリーアドレスマネジメント?部下マネジメントとコミュニケーションの実際?

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