メンターを断った話

今は割とメンター制度を取っている組織は増えてきたのではないだろうか。『今は』と書き始めたのは、自分が『メンター』と明示的にやっていたのが10年以上前だったからだ。まだ、そこ頃はメンターは今ほど認知度はなく、メンターとは、から説明が必要だった。メンターという言葉もまた、PMPを取ったときに学んだ言葉だった。

チームにメンターを導入したとき、次のようにメンターとメンティーをマッチングさせた。

  1. チームをメンター(助言者)とメンティー(助言を受ける人)に分ける
  2. メンティーは必ず一人、メンターを獲得しなければならない
  3. メンティーはメンター候補から選び、直接引き受けてもらうように申し出る
  4. メンター候補は複数のメンティーを受け付けて良い
  5. メンター候補は断ることができる
  6. 1年間メンター、メンティーの関係となる(途中でやめてもよい)

 

なかなか、ドキドキものである。メンター候補はメンティーから申し込まれるかどうか、ヤキモキしたようだ。これまでのチームへの接し方、メンティーが助言を受けたい専門性、仕事っぷりを評価されるようなものだ。メンターと言えども、チームの2/3くらいのサイズだが、これまで需要者側から評価されたことはなかったはずだ。それを直接申し込まれるという手法でメンター候補に知らしめることができる(あくまでも狙いはメンティーの成長の助言者を作ること)。

配慮は、直接引き受けてもらえるように当事者間で行った。そのうちにわかることではあるが、市場価値を突きつけたいわけではないのでそんなことはしない。

メンター候補が、メンティーを複数持てることを許可したのは、もともと1対1の関係にならならなったこともあるが、メンター候補が悩むことをさせるより、メンター候補が自身の対人関係のキャパシティを知る感覚を覚えさせることを考えたからだ。

脱線するが、人は一人ひとり同時に目を配ることができる人数のキャパに違いある。Aさんは10人くらい目を配ることができても、Bさんは3人が限界、ということはよくある。この人的キャパプラ(独自用語)を知らずして、規模の大きいプロジェクトチームを任せたらどうなるかは想像がつくだろう。目が届かないところが出てきてあっというまにプロジェクトはトラブルのである。それをコミュニケーションが悪かった、不足したと片付けられたらたまったものではない。

話を戻す。

メンティーは必ずメンターを確保しなければならない。これは制度を浸透させるための策である。であるから、メンターと合わなかったり、当初の目的の助言を得られ不要になったら解消して良いとした。

ということは、メンティーもまたメンター候補に選ばれなければならない。メンティーもまた、メンター候補の目線で、助言することに値する存在であるかを問われるのである。

 

 

数年経った頃、あるメンティーが相談しにきた。自分にメンターを頼みたい、と申し出てきた。これはとても良い目の付け方をしている。枠組みに縛られないということは、客観的に場を見る力を持っているということだ。

だが、丁重に断った。

なぜなら、教えがいのあるタレント性を持っていなかったからである。勇気を出して意思表示した本人には気の毒であるが、そういうルールである。自分の時間は有限なのである。

 

 

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