『ぷしゅ よなよなエールがお世話になります 井出直行』

待合の時間が長そうだったので手元にあった積ん読からサコッシュに詰め込み所用に向かう。想定通りの時間に着いたところで券を忘れたことに気づき、受付に申し出ると予約票で問題ないと処理をしていただき、予約のメニューを順に済ませる間に、ページをめくる。

著者のてんちょことヤッホーブルーイング井出直行社長の講演を伺ったことがあるのだが、とてもお話が上手である。一瞬で会場の空気を掴んでしまう。話し方もくだけつつも丁寧に話される。

ちなみに、講演のスライドの内容は、積ん読の『ぷしゅ よなよなエールがお世話になります』に書かれていることの抜粋だと思ってほぼ良い。ほぼと書いているのは、スライドの後半でまとめられていた箇条書きのまとめ方が少し違う。

エンジニアの育成で必要となるスキルをレーダーチャートにプロットしたいとする。基準を目指す直近のロールに定め、比較するエンジニアのスキルをプロットすると基準を超えている項目もあるだろうし、基準に満たない項目も出てくる。こうしたとき、マネージャでもエンジニア本人でも基準を超えているスキルをもっと伸ばすか、基準に満たないスキルを無理にでも引き上げるかどちらをするか躊躇するものである。

自分が若い頃は目指すロールになりたいのだから、低いスキルのロールを伸ばす方が良いと考えいた。そのあと、マネージャをするようになり、何十人ものエンジニアの育成に関わり合ってきた結果、得意なスキルを伸ばす方が良いと思うようになり、今は得意なスキルを無限に伸ばすように促している。

てんちょも、同じように『得意なことを仕事にすると、人は輝く』と書いている。人は得意だと自負している才能を使い、上手にできると楽しいと感じる。その感じたとき、人はなんとも言えない幸せに触れ、輝くようにみえるのだろう。

メンバのエンジニア自身が自分の力で生き残るために生存戦略を考えることを促してもなかなかスパッと出てこない。それは自分の長所をエンジニア自身が自覚していないからという1つの要因もある。面白いことに、当のエンジニアは自分の長所に気づいていなくても一緒に働いたことのあるメンバや顧客がその長所を好意的に捉え、一緒に働きたいとリピートオーダーすることもある。いわゆるご指名である。

『僕らの個性ってなんだ?』では、ヤッホーの個性を知ってもらい、興味からファンになってもらうことを目指したのだという。エンジニアという職業は、チームで働くが、一人ひとりの基礎スキルと技術スキルをひどく精査される職業である。チームで働くというところで基礎スキルを晒され、システムデザインや仕様のコード化で技術スキルを試される。その点からも、エンジニアは自分の個性を把握し、どの程度の貢献を自身で知っておく方が、より多くのファンを作るために何をすればいいかに繋げやすい。エンジニアも売れて(プロジェクトへ参画して)ナンボ、である。

プロジェクトマネージャになり、チームを編成するとアサイメントしたチームメンバのスキルの総和ではプロジェクトで必要となるスキルやスキルレベルの閾値に満たないことが多い。そうしたとき、無理やり時間(残業)で押し切るよりは、閾値に満たしていないことを認知し、プロジェクト内研修で必要とするレベルから着手できるように研修を計画し、実行する必要がある。これはPMBOKの古い版にも書かれていることである。

『スキルは挑戦しながら身につければいい』としれっと書かれている。

イシューはチームビルディングであるのだが、その前に書かれている『リーダーの不満は自分自身を写した鏡』で重要なことを述べられている。リーダーの目指す方向と同じ方向にメンバも顔を向けられなければ、メンバはリーダのいうことを理解していないということである。アジャイル開発でよく言われる『同じ方向を向く』や『同じバスに乗せる』と同じなのである。それを確かめるには、リーダの進む方向のタスクをメンバの理解だけで進められるかどうか、を見れば良い。具体的にはリーダが不在期間を作って実際にいなくても進んでいれば良いのである。

そして肝心のチームビルディングであるが、楽天にそうした楽天市場の出展者向け(だと思うのだが)に大学が用意されていて、出展者教育を行なっていることを初めて知った。楽天から見たとき、楽天を反映させるには出展者が楽天で儲けを出し、サービス料を払ってもらうため(もちろん研修は有償である)を考え、間接的にリターンが得られる支援策を取っているのだろう。

『早ければ早いほど、最高のチームができる』で立て直しの頃に将来の拡大を見越した視点を持ってチームとして機能させるための活動に取り組まれたとある。全くもってその通りで、これはプロジェクトチームの立ち上げでも必要な必修科目でもある。それをやらず(何も同じチームビルディングの研修をやる必要はない)にチームを立ち上げることは、プロジェクトをネジを碌に閉めないままに稼働させるようなものである。

話の場は、ヤッホーというブルワリーでのことであるが、組織の中でのメンバ、メンバが機能するチーム作りのヒントを得られるだろうし、そうした知識や経験を持っているマネージャは言語化により形式知として学び直しができるテキスト的な本である。

 

 

ぷしゅ よなよなエールがお世話になります

ぷしゅ よなよなエールがお世話になります

 
よなよなエール 350ml×24本

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