異世界な事業会社でフリーランスが心理的安全性を失わないために

ここ数年のエンジニア界隈、特にSIerから事業会社へ流動性は少しずつ高まっていると感じられる。身の回りでは、ここ数ヶ月落ち着いた感じではあるがそれでも副業を始めたり技術顧問になったと報告されていると、一定のパイプラインが確立したのだろうと思う。

事業会社から事業会社へ、稀に事業会社からSIerへ。後者のケースは珍しい。多いのは、SIerから事業会社と事業会社to事業会社のどちらだろうか。

この他に独立されるケースもある。いわゆる個人事業主である。事業会社orSIerから個人事業主へ。事業会社から個人事業主になるのは割とわかる。事業会社で事業に携わっていて自分自身でやりたい事業ができて、でも事業会社のコアコンピタンスではないとか、いっそうのこと自分でやろうとか、であろうから経験を積んでいるのでポテンシャルもある(だろう)。

チャレンジングだと思うのは、SIerから個人事業主の方である。なぜなら、SESや多重請負で一兵卒で、個人的な活動として課外発表や露出をしていなければ名前が売れていない。ましてやSierに在籍中から仕事を引っ張れるような『個人』の名前で売れて(営業できて)いなければ、独立後に手持ちの案件がなく預金が溶けかねない。

フリーランス声掛けされる

なんだかんだいって、裏付けがあってSIerから個人事業主としてフリーランスになっているはずだ。だから短な交友関係には仕事をくれとちょっとした営業くらいはするだろう。案件を継続してくれる事業会社もあるだろう。事業会社からみれば、SESやSIer経由でなければ直取引になり、SIerの様々なコストをカットすることになるから相対的に買いは下げられる。もちろん、個人事業主はリスクの観点から契約しない事業会社もある。

昨今、エンジニアの需要は高いから知り合いの知り合いから数件は声がけがあるのではないか。事業会社によっては、正社員と並行で個人事業主を募集しているところも多々ある(そのくらいエンジニアの需要は高い)。

フリーランス、カルチャーショックを受ける

今までSESやSIerで仕事をしていると、エンジニアのリソースを売ることが事業となっているから稼働時間を全部顧客に売る。8時間*稼働日、8h*20日=160時間の稼働が見積もり前提となっていたら、そのSESやSIerはエンジニアの技術を育成するつもりは皆無である。

最低限の技術動向を追いかけたいエンジニアはキャリアを考えた方が良いが、それは別な話なので過去のエントリを検索されたい。

最低限、エンジニアが見積もり、契約を知らなければならないのはこういったことがあるからである。

SESやSIerの仕事ではなく、新規の事業会社の案件をすることに決めた場合、(もちろん事業会社によるから案件の引き合い時点でわかるものであるが)稼働時間全部売っているSESやSIerにいたエンジニアは、個人事業主として事業会社と契約すると歓迎される。それはそうだ、猫の手も借りたいのであるから。

一緒に事業を拡大するのに手伝って欲しい、一緒に開発しよう、などキラキラした異世界の扉が開く瞬間である。

金曜日にはTGIFと称して午後になればプシュッとするし、二十四節句や外来の催事としてお祭りをするし、全社ミーティングと称して繰り返しコミュニケーションを図る。

今まで契約で、スコープの範囲で、お金の切れ目が縁の切れ目で、SOWでの線引き、進捗のトレース、遅延時のキャッチアップ、デスマ。

そうした世界から足を踏み込んだ世界は異世界じゃないとしたら何だろうか。

フリーランスになったエンジニアはカルチャーギャップにバグるのは当然である。

心理的安全性を確保するなら

フリーランスであるから、対価的に優良案件であれば継続することが個人事業主としての事業の安定化である。

当然としてエンジニアとしての価値観があっている前提でではあるが、案件を選択できない場合は、対価を得るためにエンジニアとしての価値観を自ら一時的に誤魔化す場合もある。

カルチャーギャップ、デカルチャーとどう受け入れられるか。

対価を得るためにを行動指針にするのであれば、対価に見合う必要な対応をするだろう。

でも中にはツマラナイ自分の価値観を前面に押し出すフリーランスもいないことはない。心理的安全性や多様性に共感している発言をする一方、自分の価値観と合わない(そもそもカルチャーギャップで潜在的にストレスを感じているはずである)新しい仕事場で、歓迎されない振る舞いをし始める。

その案件がエンジニアとしての価値のある仕事なら、どう振る舞えばいいか。何もデカルチャーを飲み込む必要はない。仕事以外は最小限のおつきあいをすればいい。もともとフリーランスなのであるからお忙しくて当然である。次の案件も自分で見つけなければならないし、複数の案件を抱えて依存しないようにしておく方がビジネス的にも当然である。

つまり、自分の価値観を前に出してデカルチャー異世界の住人から眉を顰められるより、異文化から一定の距離をとる方がそれこそ心理的安全性を確保できるのである。

誰も喧嘩したいわけではないのだから。

 

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