機能していないカンバン

とあるカンバンがある。

カンバンとはアジャイル開発などで出てくるカンバンであり、ホワイトボードに付箋がペタペタと貼ってあるイメージをしてもらえればイメージはだいたい合っている。そのカンバンである。

その、とあるカンバンは機能しているかと言うと、本来のカンバンとしては機能していない。使い方が単にタスク(チケット)の備忘のスペースでしかない。

カンバンを使うのは次の目的があるからである。

  • プロセスの可視化
  • チケットの進度の共有
  • WIPの制限

プロセスの可視化

ホワイトボード(壁の方が広く柔軟性があっていい)を縦の列に区切るのは、プロセスを定義して、そのプロセスで働くことをチームで合意する意味合いがある。

列ごとにプロセスで行う処理を決め、それを充足し、確認をしてチケットを先のプロセスに進める。

ウォーターフォールで使うWBSは、管理の繁雑性との折り合いから5営業日以内で設定することが多い(最近はもう少し単位を小さくしているケースもある)。5営業日の場合、いくつかの作業プロセスをチャンクにするケースも出てくる。

そのような場合、塊の中になってしまうので、アクティビティがどのプロセスにいるかは担当するエンジニアに委ねてしまう。この場合、プロセスの可視化は行われない。アクティビティはWBSにしておき、実作業をカンバンでやるならそれは解消されるがWBSの意味はあるかと言う別の議論が起きるだろう。

チケットの進度の共有

チケットのプロセスを可視化することで見積もりした作業の規模に対して進度、つまり作業スピードを可視化する。この可視化で得られるのは、あるチケットの進度が停滞しているときに、担当外のメンバが異変に気づける情報を何の新たな手段を導入することなく実現できることである。

WIPの制限

work in progressである。進行しているアクティビティを可視化する。可視化することで、1人が複数のチケットを進行させるようなことを止め(チームで決めたのチケットの上限以内に)作業を集中させることを促せる。

カンバンとして機能していないカンバンは、WIPを制限していない。作業仕様が具体的になっているからとWIPに貼るから備忘のためのカンバンになる。

これのどこがまずいかと言うと、タスクの優先順位づけができないエンジニアはあちらこちらに手を付けてどれも終わらないのである。あちらこちらに手をつけるようなエンジニアは個々の見積もった規模は当たり前のように記録もしない。見積もった意味もなくなってしまう。

一つひとつ終わらせないといけないのは、その見積もりの妥当性を検査する意味合いもある。差異があるならそれを共有しないとチームの見積もりに知見がフィードバックされない。

 

 冒頭のカンバンはToDoリストであり、個々のチケットは可視化されない優先順位により適正に行われるとするのであれば、それはそれでタスクの情報の共有の意味合いしかない。

 

 

 

マンガでわかる トヨタ流の生産方式とマネジメント

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