今どきの企業カルチャーと宗教ぽさ

Web系の組織だとカルチャーを全面に出してアピールをする。これは採用で組織のカルチャーにフィットする=共感する人材『だけ』を採ることを狙いとしているのだろう。

想像してみよう。どこも人材難でエンジニアは昨今特にひどい。それなりの技術を持っていればあっという間に数社から声がかかるだろう。場合によっては言い値で採用してくれるかもしれない。転職するエンジニアは少しでも企業を決定する自分の価値観に合う会社を選びたいと考える。それは待遇かもしれないし、やりたいことを実現できると言う先方のコミットに、かもしれない。

採用する会社からすれば、そうした活動でコストを掛けてまでもエンジニアが欲しい。それは実現したいことがあるからで、入ってもらったらパフォーマンスを発揮することを期待している。

当たり前のことであるが、それがその当たり前が実現されないことがある。入ってみたら、外から見えていた風景とは違うものがエンジニアにストレスを及ぼす。

それは、仕事をするときの意思決定での価値観の違いである。創業者の独断であるとか、不条理な意思決定とかいい加減な仕事ぶりでも進めてしまうなど、振る舞いとして現れる。

1日のかなりの部分を仕事が占めている。その大きな時間の中でエンジニアの考え、価値観、意思決定のズレが何度も起きているとしたら、パフォーマンスは発揮されるだろうか。

エンジニアがそれに気付いたとき、急速に気持ちは冷めていくだろう。こうしたケースも多々あるのだろう。

採用はとてもコストが掛かる。現業に投下できるリソースを割いているかどうかわからないエンジニアを探すのだから。苦労して採用したエンジニアが実は意思決定の価値観で合わないとわかっていたらどうだろう。割り切って採用するだろうか。多分しない。遅かれ早かれどちらかがストレスフルになってしまうからだ。

入ってからミスマッチを知るより、先に曝け出して合うエンジニアに来て欲しいと言う切実なアピールなのだと思うと、新卒で大量に採用するSIerは離職のリスクを相当抱えながらやっているのだと思うし、リスクより採用コストの生産性(低コスト化)を図っているのだなと思う。

全面に押し出す価値観に合うエンジニアばかりが集まると宗教じみていると感じるのは、こうした背景があると想像することでなんとなくわかったつもりなれる。