素振りは、身につくまで


1回やったら、もう、いつでも出来ると思っているの?
勘違い君はどこの世界にもいるもので、−若い頃のワタシもだが−、仕事を1回経験すると次は必ず成功すると信じて疑わないエンジニアがいる。顧客も、システムの特性も、プラットフォームも、納期も、プロジェクトメンバも、それは組み合わせが全く違うのに。そのようなタイプのエンジニアは、仕事の本質を見抜けず、

“上部だけで、わかったつもり”

になっていることが多い。守破離の“守”が出来ていない。それはまれに、1回で物覚えや本質を掴む天賦の才を持つエンジニアもいるが20%もいればいい方だ。残念ながら、自分のような普通なエンジニアは、自分の腹に落ちて仕事が出来るようになるには、一度体験し、頭の中で整理し、実践にフィードバックする手順を踏まないと誰かにそれを展開できるようなレベルにはならないし、整理から実践へのフィードバックも一度ではすまない。


素振りは、身につくまで
それはまるで素振りのようなもので、型を体と精神で覚えるようなものだ。体で覚えるのは手足を使ってであり、精神とは意識と置き換えてよい。エンジニアが仕事をするとき、すべてPCの中だからといって体を使わないとはいえない。何かをアウトプットするためには、手を動かしてシミュレートしてみたり、紙に書き出してみたり、それをキーボードにインプットしたり、動作を伴うものだ。そして、その経過には視覚や感覚を意識して使っているものだ。

“それはまるで、素振りのように”

型は、一度で覚えられるものではない。素振りを繰り返し、体で“いつも同じ動作が出来るまで”を繰り返す。その繰り返しの中で、体の姿勢、重心の高さ、左右のバランス、振りかぶる位置、振りかぶる速さ、止める位置、止めたときの目線など、身体で意識するものと精神的に意識するものと合わせて行うものだ。

素振りは何でも置き換えられる。スポーツの方がより、イメージし易いが、物を作り上げるのであれば同じように体感できるだろう。それがジョギングをすることでも画を描くことでも。


それはまるでルートをクリアできないゲーム
型を身に着けることに、“ゴールはない”と思う。止めた途端、劣化がはじまる。1日休めば取り戻しに3日は掛かる。それでも、自分で仕事を覚え、身につける。その身につけ方は、人それぞれであり、取り組む型もさまざまだ。
身につける型はいくらでもあるように、身につけ方がさまざまであり、すべてのルートをクリアすることは難しいだろう。なぜなら、仕事ごとに環境、条件など違うからだ。
ただし、現実的にはすべてを知る必要はないし、ある程度の型を覚え身につけられたら、どのようにでもなるものだ。
このやり方に近道はない。エンジニアそれぞれの取り組み方はあるにしても、身体と精神の両方を両輪のようにシンクロさせながら、ただただ練習するほかない。