3つの世界と2つの境界で考える設計力と表現力


このところ、設計する技量とそれにまつわる環境について考えていたのだけれど、頭の中でモヤモヤしていてもスッキリしないで一度頭の中を整理を試みたら意外とスッキリできそうなのでそのメモ。
この世界観は、設計だけにしかあてはまらないわけではなく、設計をコーディングに変えても適用出来る。
#手元にはフリーハンドで描いた図があるので、需要があれば図式化しますけど。


世界観としての原理原則
“系統立った価値観を持つ”ものの上に成り立っているということ。系統立ったという意味を言い換えると“計画立った”で言い換えることができる。顧客が要求する動くシステムを届けるために、プログラムを行き当たりばったりで作ること自体おかしい。なぜおかしいかは、以降を読むとわかる、と思う。


3つの世界と2つの境界
この世界観は、3つの世界と2つの境界で成り立つ。この3つの世界と2つの境界は世界観の原理原則の上に成り立つ。

3つの世界

  1. ニーズ・期待
  2. プロセス
  3. アウトプット

2つの境界

  1. ニーズ・期待とプロセス間の境界
  2. プロセスとアウトプット間の境界

プロセスの内部構造
3の世界のうち、プロセスはその内部構成としてさらに3つの要素で構成する。

プロセス

  1. 変換する力
  2. 見えない力
  3. 見える力


ニーズ・期待
ニーズ・期待は、“顧客要求”だ。システム開発の連続した工程であっても、前工程が後工程に要求するニーズ・期待とすれば矛盾は生じない。ニーズ・期待は、一つかもしれないが大体複数だ。複数のニーズ・期待は、それぞれ充足することなく、対立関係を取る。どれかを取れば、他の物を下げなければならない関係を取る。
このニーズ・期待をプロセスに取り込むときに注意することが1点ある。それは、ニーズ・期待の“優先順位が明らか”か、と言うこと。優先度、ではない。どれが顧客のビジネスに一番の価値をもたらすのか、ということである。同位はありえず、あってはならない。ニーズ・期待の優先順位は、プロセスに取り込むとき、ものごとの判断基準に置き換わるためだ。


アウトプット
アウトプットは、プロセスの振る舞いの産物である。ニーズ・期待が要求するものを振る舞いであるプロセスを通して変換されたものであり、ニーズ・期待の優先順位とプロセスで振る舞われる行いの結果に他ならない。つまり、アウトプットは、なるべくしてなった結果であって、その振る舞い以上の結果にはならない。


プロセス
プロセスは、3つの要素で成り立つと述べた。その3つは、変換する力、見える力、見えない力だ。


変換する力
変換する力は、ニーズ・期待をベースラインとして優先順位に従い検討、執筆(コーディング)する。執筆されたdeliverableは、レビュー(テスト)に移され、ニーズ・期待を満たすものだけアウトプットとすることができる。
レビュー(テスト)の中ではメトリクスを採取し、執筆活動にその結果を戻すことでニーズ・期待との較差、つまり、誰に、どこに乖離の傾向があるか、プロセスのカイゼンを目的として戻す。

変換する力は、ニーズ・期待の優先順位を“デザインの方針”として据え置く。このデザインの方針は、ニーズ・期待を如何に確保するかそのレベルに影響を及ぼす。変換する力は、外的要因である人・モノ・金・時間という抗えない要求の中でニーズ・期待の優先順位をどのように扱えばよいか、その判断基準とする。


見える力
見える力とは、執筆するために目視で確認できる補助する技能である。見える力は、見た目の観点で寄与するもので構成する。体裁を確保するために用いるのであり、誰がこの振る舞いをしても最低限の当たり前品質を確保することを目的とする。

  1. テンプレート
  2. 用語集
  3. 目次構成
  4. 図・表


見える力は、型である。守破離の“守”としてもよい。型なのでレビュー(テスト)での指摘がし易い。型に沿ったレビュー(テスト)は必要なことで、アウトプットに出す前に最低限確保しなければならないものでもある。
同じテンプレートを用い、同じ用語を同じ意味で使用し、系統だった構成の中で、曖昧さのない図、表を多用することで、目に見え判別しやすい表現として見える力を使う。
これは、ニーズ・期待の充足性、検討されるデザインの妥当性、deliverableとしての解読性を確保する。


見えない力
見えない力とは、変換する力の上で使用する見える力を表現する“言葉の表現・選択”である。変換する力は、その作業に関わる人が守らなければならない規律であり、見える力は、規律の上に立つ補助ツールなのである。ところが、見えない力は、個々の人に強く依存するアーティスティックな面が強いため、関わる人々の方向付けを一律に揃えることは取りうる範囲が広すぎる。
見えない力がアーティスティックであるということは、守破離の守や型にはめられないという証左でもある。あまりにも個人に依存するため、その要素が関与する範囲を別の観点で型にはめているのが見える力であり、そこでアーティスティックな部分を可能な限り削ぎ取ることで、そこで生じる

“明示されることのない暗黙の期待”


と成りがちな個人に依存する言葉の表現・選択が検討するdeliverableに影響を及ぼすことを最小限にする。

見えない力で表れる言葉の表現・選択をレビューするとき、型にはまらないものをレビューすることになるため、見える力のレビューと対極となる。誰でもが型との相違を指摘することができない。これは、書き手のアーティスティックな表現が読み手のアーティスティックな受容と一致することがないからである。さらに顧客レビューがある場合、レビューアのレビューアとしての立場から、顧客自身のニーズと期待を判断することになり、一段の曖昧さを増すためだ。
この曖昧さを極小にするために顧客のニーズ・期待の優先順位とデザインの方向性を始めに確立しておくことが肝要だ。