コミュニケーションの問題は両者の期待へのギャップだと気づかせることがポイント

以前あったプロジェクトでの話です。そのプロジェクトは、シニアエンジニアの人がプロジェクトマネージャで、提供するソリューションを熟知していていまして。で、プロジェクトチームの中には社会人になってまだ数年の若葉ちゃんもいました。

プロジェクトの進捗を週次でトレースしていると、適度に課題が出ており、その消化もそれなりに進行していたのでプロジェクトの運営としては問題はなさそうでした。

そうであれば、もう一つの心配のタネはメンバの健康です。大規模なプロジェクトチームであれば、メンバが風邪を引いても影響なんて高が知れているものですが、少ないメンバでの健康面での心配事はその心配事が発現すると途端にプロジェクトのリスクにクラスチェンジします。

代替要員を手配し、現行のメンバから手持ちの仕事と並行でスキトラをさせて新規メンバを立ち上げさせ、コストインパクトも最小限にコントロールしなければなりません。

健康面への手当てから、別のリスクを知ることがありました。


第三者へのインタビューが意外と大切だったり
勤怠はその組織の決まりごとなので様々でしょうが、給与を支払うためには月次で〆なければなりません。目の前の同じ職場で働いているのであれば、誰が遅くまで働いているか、自分の目で目視もできるし、休日出勤していても周りから見聞きできるものです。

本人の顔を毎日眺められ、会話も出来るのですから体調の良し悪しも現場・現物で目視できます。当の若葉ちゃん達のプロジェクトはプロジェクトルームが遠隔にあって、こちらのスケジュールからも中々見聞きすることができない。

勤怠状況で確認できるのは、本人が申請した実績のみです。それでも、他のメンバと較差があれば、担当作業の負荷や業務上の課題の壁にぶち当たっているのではないか、と想像することができるので、その〆の都度、プロジェクトマネージャと実績の過多のメンバ個別にインタビューすることが出来ます。でも、これではちょっと恐いことがあります。

それは、プロジェクトのチームメンバの関係までは計り知ることが出来ないのです。

で、どうしたか。

一緒に働いている別の組織の人に別件で合うことがしばしばあったので、雑談がてらに聴くわけです。

「最近現場で変わったことありませんか。」
「おたくのコミュニケーションってあんな風なんだね。」
「なんで。」
「だってさ、...。」


プロジェクトマネージャへのインタビュー

「プロジェクトの進捗はよさそうだけれど、メンバは疲れていないか。」
「若葉ちゃんの仕事は、数日で出来るはずだ。なのに倍以上の工数が掛かっている。」
「やって欲しいこと、具体的に伝えられているかい。」
「何度も伝えているのだけれど、同じ失敗をしているんだよ。」
「それをどうやって解決しようとしているんだい。」
「どうしたらいいですか。」


若葉ちゃんへのインタビュー

「少し残業が多いね。仕事の負荷は高いんじゃないかい。」
「自分の仕事のやり方が悪いんだと思います。」
「どうしてそう思うの。」
「同じ失敗しちゃうんです。」
「作業時間の見積もりが厳しすぎるんじゃない。プロジェクトの進捗は順調だから、若葉ちゃんの作業時間に余裕を貰ったら。言い辛かったら代わりに言うよ。」
「いえ、大丈夫です。頑張ります。」


シニアエンジニアと若葉ちゃんとのコンフリクト
誰が良い悪いの話ではありません。プロジェクトが上手く行く要素には、メンバのフィジカルな健康も精神面の健康も気を遣わねばなりません。先に書いたようにプロジェクトのリスクを発現しないようにすることもリスクをコントロールするプロジェクトマネジメントの一翼なのですから。

そして健康面にでる問題の原因の多くはコミュニケーションにその原因があることが多いのです。


プロジェクトマネージャへの助言

「プロジェクトマネージャさんは、エンジニアになって何年経ったのかな。」
「若葉ちゃんは社会人になって何年だっけかな。」

「数年しか経験のない若葉マークの若葉ちゃんのスキルのレベルは知っているかな。」
「要求と実態のギャップを考えたことがあるかい。」

「プロジェクトマネージャさんは、“自分がやったら”で作業を見積もっていないかな。」
「経験による能力の差があるのは当たり前だと思うんだけれど、どう思うかな。」


若葉ちゃんへのアドバイ

「わからないことがあったら、何時でも何度でも聞きていいんだよ。ワタシもそうやって何度も聞いたよ。」
「今、若葉ちゃんは、それをやれる権利を持っている期間なんだから。4年目からは中堅エンジニアだから、今、聞いておこうよ。」
「質問をし難いなら、いきなり質問をしないで、その質問をメモに書いてみたらどうだろう。」
「頭の中で考えがなら質問をするのは、高等テクニックだと思うよ。ワタシにだって難しいと思うことがあるくらいだし。」


人は暗黙で期待をし過ぎ悩む
プロジェクトマネージャは、若葉ちゃんへ経験以上のアウトプットの成果を期待し過ぎたのだと思います。ワタシがプロジェクトマネージャのときは、勿論、WBSでのdeliverableを定義してそのdeliverableの品質を求めますが、でもやるのは人なのでその人の顔を見て、この人はこのくらいの品質だから、と未来を見切ってました。

出来るエンジニアは期待以上の、心配しがちなエンジニアは最悪を想定して、普通のエンジニアはそれなりで、結果を期待します。
結果を予想するから、それにならないようにしたければ、必要なアクションを能動的にするわけです。

当のプロジェクトマネージャは、すべて自分を基準軸に物事を定義して進めるのだけれど、それについて来れないエンジニアだっていると今回の悩みを会話することではじめて知ったわけです。

それは、自分の期待を“暗黙”で期待することに因るのです。自分の期待があるなら、期待する人がリーダなら、自分の期待は期待するメンバに遍く知らせ、理解してもらわなければただの独りよがりになるだけです。

若葉ちゃんは、期待される暗黙の期待を受け止めようとするところは健気なのですが、仕事なのですから自分の想像を超えているものは超えていると伝えなければ成りません。ギャップがあるのだと、伝えるのは受け手の権利です。いや、義務かな。プロジェクトマネージャと同じように、暗黙で期待に応えようとしたからなのです。

コミュニケーション能力とは、相互の意思疎通以上でも以下でもありません。それ以上の意味は別のスキルです。例えば、伝える側の意思のとおりに受け手を動かしたいなら、それは交渉力の範疇です。

コミュニケーションの問題は、両者の問題だと気づかせることがポイントだと思っています。