プロマネは技術を伝承して育成できるという4つの誤解


技術の伝承と次世代プロマネの育成の問題
技術の伝承と言うと、職人が徒弟制度の中で師匠から新米が技術を一から教わり、師匠の眼に適うようになったら年季奉公が明けてはれて一人前と認められるようなイメージです。師匠対弟子の関係になり、師匠が付きっきりで指導をすることになるのでその関係は1:1に近いものではないか、と思っています。


ITエンジニアリングも技術は人に依存するのでその技術を伝承しなければ次世代が勝手に育つのを待つしかしないし、それでは顧客にITサービスを継続して届けることは人的リスクを孕むことになることなります。勝手に育つは、後から来る新米のプロジェクトマネージャ候補は一から自分ですべてを経験しなければならなくて、それで上手く育てばいいけれど、やってみたらプロマネ候補のタレント性に合わなくて、とか、その前にだれもプロマネになり手がいなかったなんてこともあり得るわけです。


だから、組織としての体裁を保つなら、人造的にプロマネを育てる必要性が出てくるわけです。ところが、どうも組織の中でのプロマネの育成が上手くいっていないのではないかと思うんですね。それはどうしてでしょう。


経験を積めばプロマネになれる
経験を積めば誰もがプロマネになれるということはまずありえないことです。マネージャが誰でもなれるわけではないように、マネージャの必要とする資質と大部分のスキルが被るプロマネだって誰でもなれるわけではないのです。プロジェクトマネージャに必要な基礎スキルと得意な業務エリアの知識を専門スキルとして持ち合わせていることが必要で、その上、プロマネに必要なプロジェクトのゴールへ引っ張るリーダシップを持ち合わせている必要があるのです。


経験は大事なものですが、その人の体験に基づいたプラクティスであってただそれだけでしかないのです。その人のプラクティスにプロジェクトマネージャとして必要な経験値が含まれているかは別な次元の話です。だから、経験を積めばプロマネになれると言うものではないと思うのです。


プロジェクトマネージャ候補は自ら学ぶ
プロジェクトマネージャになりたい候補のエンジニアは、黙っていても勝手に自ら学び、成長しようとするものでしょうか。たしかに、ワタシのようにやりたい仕事がプロマネだったりして置かれた環境と実践したい環境にギャップがあって自助努力をしなければそれを補完できないと知ったら学ぶケースもあるでしょうが、反対にそのギャップに愕然として諦める人もいるかもしれないと思うのです。


プロマネになろうとする人は自分の目標を明確にイメージしているからその目標の実現性を確保するためのアクションの結果が学びとして現れるのであって、明確な目標がなければそうならないでしょう。


師匠たる先輩が積極的に後進を育成する
業務上必要なことは教えるのだと思います。なぜならその理由が明確だからです。そのケースで更新する理由は、育成しなければその業務の作業量を維持することが出来ないからです。それはその先輩に上司からその業務が一人でできるように育成しなさいと業務命令として下るからであって、マネージャからの意思には拒否できないからです。


業務上必要なスキルはそうしてスキルトランスファー出来るのですが、プロマネは業務そのものではないから同じようにいかないのです。業務を習得させるときにわざわざ「これはプロマネのスキルでね。」とは言わないものです。


人は意識的に目的がはっきりしなければそれを気にして学習し成果を確認しようとしないものです。自然と背を見て育てよう、では、育たないことをそろそろ気が付いた方が良いのです。背を見て育つは、後進に意識的に背を見せると後進に伝えなければその意図を知って意識することもできないし、後進もその人の背を見て育とうとする意識をしないから学ぶ効果も期待できないのです。


組織が後進を育成してくれる
良く聞くフレーズのように思えるのですが、ここでいう組織とは具体的に誰かが問題なのであって、組織とは擬人化されているけれど実態はないのですからそれは組織と言いつつも実際は具体的に教える人が引き当てられるということを意味します。


そうなら、引き当てられる人がプロマネ候補を育成する先輩にあたるのかもしれないけれど、組織と言っている間は誰がになっていないので育成の責任が曖昧勝ちになってしまうのです。曖昧になるということは誰も責を負わないのだから真面目に育成する成果なんてたかが知れているのです。


じゃあどうするの
ワタシ的に自ら学ぼうとするプロマネ候補を如何に見つけるか、見つけたら徒弟制度の中に組み入れて実践知を学ばせながら、プラクティスである形式知を定期的にリフレッシュされる方法しかないのではないか、と思うのですが...。その答えであるプラクティスもまだ私の経験値だけであって確固たるものにはないっていないのです。