提督論、若しくは、艦これで掴むプロジェクトマネジメントの基本の“キ”


「おいおい、何を言っているんだい?」
「お前が何を言っているのかわからない。」
「まさか、タイトルを見てそんな安直な感想を持ったなんて言わないよね。」
「え?」
「ここに来てるくらいなんだからエンジニアだよね?」
「えっ、マジなの?」
「えっ?」


さて、艦これでプロジェクトマネジメントの基本の何が掴めるのか。今更、艦これの説明は不要だと思うのでそこは省いて先に進めよう。とは言っても先行きが見えない話を聴かされるのも不安を煽るだけなので、プロットのようなものを示しておこう。

  • 10秒で解る“艦これ”
  • 艦これとプロジェクトマネジメントの紐づけ
  • 提督の影響下とステークホルダ


これはagendaとは呼ばないので注意しておこう。agendaにするなら、いつ始まっていつ終わるのか時間の表記が必要なんだ。
もし、知らなかったとしたら覚えておこうね。こうして知らなかったことを知ることが出来た日は良い日だ。


10秒で解る“艦これ”

“艦これとは、兵站を運営するゲームである”


艦これの説明はこれで終わり。10秒もいらないかもしれないけれど、短いフレーズが意図することに辿り着くためには10秒でも短いかもしれない。でも、何を言おうとしているかの、あたりを付けるくらいなら10秒でちょうど良いと思うんだ。


艦これは、艦娘を愛でるゲームでも艦嫁を召喚するゲームでもない。いや、してもいいけど。龍田さん、カワイイ。から揚げより竜田揚げが好きなワタシとはそういう運命だったんだね!



艦これはコストをコントロールするマネジメントゲーム
艦これをゲームとして運用するにはコストがかかる。これは、艦これを運営し、進撃し続けるめに我が身のお財布からキャッシュアウトが必ずしも発生するという意味ではない。そうであれば、パズドラをやらないように艦これに手を付けることはなかった。それを知ってからエントリしたのである。


ここで言う運用コストが掛かるという意味は、日々の作業の課題解消をするために編成する艦隊の維持補修に燃料や鋼材などの資源が必要になるということである。デイリーワークをさせても、手持ちの燃料や弾薬がなければ帰港した後の艦隊に補給が出来ないのである。ましてや、出撃した後に被弾していれば補修工事が必要になることは誰でも想像がつくと思うが、それもままならないのである。



それが、任務で求められる艦隊編成だとしても、提督の性癖に依る艦隊編成だとしても。


それを世知辛いとか言ってはいけない。世の中、掛かるものは掛かるのである。それを賄うのが提督なのであり、男子たるもの、なのである。手持ちの資源がないのに見えを切ったり、「この艦娘が嫁だから!」などと言ってデイリーワークに不釣り合いな艦娘で編成するのは愚か者の提督がすることなのだ。


デイリーのワークの結果がいかなる結果であろうとも、それを提督たるもの受けれなければならない。それは提督としてその作戦に対して艦隊を編成し、送り出し、保守するのが責なのであるからである。


艦これに必要なコストは編成を維持するための資材ばかりではない。時間である。

「えっ?時間はタダでしょ?」


なんていう輩も何もわかっていないのである。時間が一番高いコストの掛かるものだから、である。「時間なんて幾らでもあるよ。」というかもしれないけれど、時間は、地球上ではそこで暮らす生命にたいして平等に与えられえるリソースなのである。それは何を意味しているか。


デイリーワークを急いで片付けたくなってもこちらの都合で勝手に進まないし、イベントで特別にドロップする艦娘を獲得するために何度も出撃と入渠を繰り返し資源の復旧を待つにしてもお構いなくのんびりとしか資材のカウンタは戻らないのである。それは、こちら側の運営する司令艦隊の都合は加味されないということである。



そして、こちらの都合を訊かれないまま、新しいイベントに突入するのである。あぁ、バケツが足りない……、となるのである。


艦これとプロジェクトマネジメントの紐づけ
先に述べてきたことからキーワードを列挙してみる。

運用 コスト 運営 キャッシュアウト 日々の作業 課題解消 編成 維持補修 資源 デイリーワーク 任務 掛かるものは掛かる 見えを切ったり 不釣り合い 受けれなければならない  責 時間 リソース 都合は加味されない 新しいイベントに突入 バケツが足りない


これをdeliveryの基本であるQCDに分類する。

項番 分類 キーワード
1 Quality 日々の作業 維持補修 任務
2 Cost コスト キャッシュアウト 資源 掛かるものは掛かる 見えを切ったり 時間 リソース 不釣り合い バケツが足りない
3 Delivery 運用 運営 課題解消 編成 デイリーワーク 受けれなければならない 責 都合は加味されない 新しいイベントに突入


Qualityに任務を入れているのは、作業とはアウトプットを得るためにする作業だからである。Costに時間を分類しているのは、課題によっては時間がなければ解決できない問題もあるからである。Delivearyに編成を含めているのは、プロジェクトをキャリーするためにはチーミングをしなければキャリーできないから、である。


仕事には、目標を明示的に数量的に定義できる作業とゴールを自分で設定しなければならない仕事の2つがあるが、艦これはそれで分類するなら前者の作業である。なぜなら、明確な任務が運営から明示されるからである。ただ、その運営の指示にはたどり着くためのhow toがないだけなのである。


ところで、エンジニアの仕事も手順化した作業と無から創り上げるアーティスティックな仕事に分けられると思う。前者はチームの、プロジェクトの全員が同じ作業の結果を得るためにしなければならないふるまいを定めたものであり、後者は一人のエンジニアとして動くプログラムをデザインし実装するものである。後者のそれは、大まかな制約はあるとしても神が宿る細部には誰も触れられない聖域としてエンジニアに託される。


艦これにはその領域がない。いや、あるとしてもそれは、俺の嫁を含めた編成にしかない。あとは、定量的な作業を司るQCDの法則に従ってことが進むだけなのである。


提督の影響下とステークホルダ
先の“艦これとプロジェクトマネジメントの紐づけ”は、あくまでもプロジェクトチームが話から視た一面でしかないことに注意する。プロジェクトとは、自分自身が属するチームから視た一面で世界が構成されているわけではない。


プロジェクトチームを取り囲むユニバースとしての空間の視点が必要になる。ちょっと仕事を覚えたばかりの中二病のエンジニアや余裕のないプロジェクトマネージャやアホなマネジメントはそれを知ることはない。だから、ヘマをやらかすのである。


さて、そのワタシの司令艦隊を覆う世界は何か。それは艦これの運営でしかない。それにすべては呑みこまれているのである。その中の小宇宙がワタシの司令艦隊なのである。


その世界観では、ワタシが影響を与えられるのは、自分の司令艦隊しかない。それも、編成と任務の実行だけ、なのである。それ以外は、自分のチームであっても自分のコントロールの範疇にはないのである。それは自分でコントロールのできない領域なのだ。そう考えると、艦これの運営はもっと手の届かない天上界のようなものだ。全くと言っても良い程コントロールが及ばない場所なのだ。


それは、プロジェクトと同じように、コントロールができる範疇とそれが利かないステークホルダがあることを物語っているのである。なにもそれを知り、すべてを諦めよと言っているのではない。置かれている環境を知れ、と言っているのである。それは、制約と前提条件の空間である。その中で、どのように艦娘を育て、任務の中で轟沈させずに生き続けさせるのか、ということなのである。


まとめに代えて
以上のとおり、艦これでプロジェクトマネジメントの基本が掴めたと思われる。何より大切なことは、龍田さんカワイイである。提督各位の健闘を祈る。