4月から4年目になったエンジニアのみなさんへ
はじめに
多くの日本の企業は4月から年度が始まり、翌年の3月に年度末を迎える周期で活動を一つの周期として活動しています。それに合わせて4月になれば新入社員をエンジニアとして組織に迎え、集合研修を経て、アサイメントされた配属先に割り当てられます。同じようにして4月を迎える既存のエンジニアも1年の経験というレベル値をエンジニアの意識にかかわらず自動的にインクリメントすることになります。
ワタシの定義では、入社してから丸3年までは新人として扱うようにしています。それは、エンジニアが独り立ちするまでには<基礎スキル>と<技術スキル>を並行で育成しなければならず、その両方のスキルを一人前のエンジニアのレベルに到達するには相当の時間とコストと継続的な涵養への取り組みが必要なため、まずはエンジニアとしての足元を固めるための体幹を育成させる必要があるからです。
ビジネスパーソンとして必要な2つのスキルは、意思疎通や文書作成能力など日々の仕事で使用する<基本スキル>や技術の裏付けの方法論や適用技術などの<技術スキル>があり、それぞれをどのように育むかは、アサイメントされる業務をとおして経験するOJTと経験を知識で補完するOFFJTへの取り組みに依存します。それは、業務へのアサインが人それぞれであることと育成対象となるエンジニアの関心と実践の取り組み結果に大きく影響されるということです。
3年目までは新人と同等に扱う目的
ワタシが丸3年までを迎えるまでのエンジニアを新人として扱うとする理由は、対象となるエンジニアのレベルでは一人前の対価に見合うパフォーマンスが期待できないことを対象となるエンジニアと共に働くメンバが認識しておなければならないという考えに基づいているからです。これは、丸3年に満たないエンジニアをプロジェクトのチームに入れた途端、中堅のエンジニアと同等のアウトプットを期待してしまうという誤った認識は捨てて、経験に見合ったパフォーマンスしかアウトプットできないこと基本にチーミングをしなければならないという考えに起因しています。
対して、丸3年目までのエンジニアに対しては、3年目が終了するまでは、
「何でも、何度でもわからないこと、理解したいことがあれば先輩たちの仕事を遮ってでも訊きなさい。」
と繰り返し刷り込み、業務や技術に関心を持つように意識付けをしています。返せば、4年目までには
「先輩エンジニアの支援を得ながらも一人で活動できるようになりなさい。」
という裏返しでもあります。
人へ教えることが自分を育てるということを知る
先に述べたように、丸3年を迎え、4年目になると所属するチームに新人として配属される人数が次第に増えてくる頃です。そして、その新人の業務上の育成を担うように指示される頃でもあります。まだ丸3年だとエンジニアとしての自己の育成が手に付いたばかりでエンジニアが必要とする<基礎スキル>と<技術スキル>の両方のスキルを意識しながら育成をし始めたばかりのところで、若手の育成をしなければならないという状況になるわけです。
自分を育成するだけであれば、その対象は自分自身ですからその進捗も負荷の掛け方も、さらには自分を甘えさせて計画を緩慢にしてしまうことも自由度を高く運用できますが、新人を育成することになれば別の人格をもつエンジニアを新人エンジニアの育成をアサイメントしたマネージャの期待値までに育成する責を担うことになります。それは、自分自身を育成するだけであれば育成のペーストマイルストーンごとの到達地点を調整できたところが、新人エンジニアのタレント性も鑑みてペースを作り、マネージャの育成への期待と折り合いを付けながら新人エンジニア自身がスキルを付けられるように仕向けなければならないということを意味しています。
ところで、業務でエンジニアをになっていれば自分が担当する仕事を誰かを問わず説明し理解を得るということは誰しも経験していることです。それを普段は人に自分の成果を教えているという項であることを意識して所作していないだけなのです。業務であれば、業務の目的を理解してそのアウトプットを説明し受け入れてもらうのと同様に、新人エンジニアの育成についても育成の依頼元はマネージャであっても直接の相手である新人エンジニアへの育成の目的、ゴール設定などを合意をしながら進めていくことが肝要になります。
つまり、新人エンジニアの育成を担うということは、これまでの3年で経験してきたことの自分自身の理解の振り返りの機会であると捉えます。そして、基礎スキルである目的の設定、意思疎通、文書作成に必要な要約力などの自分の実力を育成する新人エンジニアの理解をとおして客観的に知る機会とすることができるのです。そうした機会は、自己研鑽でも行うことができますがそのフィードバックを得られる期待値は、他者をとおした経験の方が自己への作用が大きく働くことを期待できるのです。
最後に
丸3年を経て4年目を迎えたエンジニアのみなさんは、まず、自分が一人で業務を担わなければならないゾーンに入ったことを改めて認識して行動することが求められます。その上で新人エンジニアの育成を担うのであれば、これまでの3年間に学んだことの理解を確認する場としても積極的に取り組むことが、1年後の新人エンジニアの成長を持って自分の業務の一部を移管できる期待をすることができることも理解しておきましょう。それは、育成をとおして自分の業務を移管し、その移管後に今度は自分で関心を持つ新しいことを呼び込むためのスペース作りの循環になるということも理解しておくことが大切です。