なんでエンジニアは八方美人になりたがるのかなぁ


とある日の午後の出来事。

「このベンダのナレッジは、操作時に注意しないといけないリスクがあるかどうか確認しておいた方がいいですかぁ。」
「そうだね。ベンダに問合せをして裏を取ってもらっていいかな。」
「今日中でいいですかぁ。」
「ベンダの回答まで?それでお願いしますね。」

「割り込んで悪いんだけど、そのナレッジを他のチームが知りたいって言っているのを聞いたんですが。」
「何に使うの?」
「なんか、システム変更の作業時にうちの機能を抑止したいんだって。」
「ほう。」
「なので、そのナレッジを教えてあげようかと思ったんだけど。」
「うちの機能は常時稼働させる要件だよ。勝手に抑止させちゃまずいでしょ。」
「でも、システム変更で必要かもしれないって……。」
「裏でね、ベンダの情報は押さえるけど、これ自分たちのためだよ。他システムに提供しているサービスじゃないんだ。出してしまうと後のフォーローが必要になったときどうするつもり?」
「ところでいつそのシステム変更したいのか聞いてる?」
「明日って言ってた……かな。」
「もっと早く言ってくれたらよかったのに。以前も同じようなことを個別対応したことあるんだよ。ね?」
「そうです。件のサブシステムの開発工程である期間抑止して欲しいって相談があったので対応したんですよ。覚えていますぅ?」
「そうだったかも。でも、今回は急なお願いなんですよ。」
「あのですね、あのときは事前に相談があったので対応できたんですよぉ。個別対応するのは設定や動作確認が割とかかるので大変なんですぅ。」
「そうかもしれないんだけれど……。」
「あーしょうがないなぁ。でもさ、まだ裏が取れていないんだから調べているって言っちゃダメだから。それが使えなかったらうちの機能を前回と違うやり方で抑止できると期待してたら困っちゃうからさ。」
「では、ナレッジの回答がわかったら済みませんが連携お願いします。」
「裏で調べているだけですからぁ。」

「ベンダの回答がきました。特にデータ領域を破壊するなどのリスクはないとのことですぅ。」
「そうなんだ。裏が取れて良かったね。」
「じゃあ、ベンダの回答結果はチケットに記録しておいてね。」
「了解ですぅ。あとでチーム内で共有しておきますぅ。」

「ナレッジの件、結果の共有ありがとうございます。」
「あ、あれね。大丈夫らしいよ。自分たちでは試していないけど。」
「あの後、件のチームの方から打ち合わせの依頼があったので会話してきたのですけど。彼らのシステム変更を確実にしたいって言われていたのでナレッジを調べているとをお伝えてました。よかった、ベンダの回答に問題がなくて。」
「ファッ!何んだって???調べていることはまだ内輪でやっていることなんだから教えちゃダメって言ったじゃん。」
「え、あの場で裏を取るって言っていたのは、教えてあげる前提じゃなかったのですか。」
「イヤイヤチガイマスヨ。期待させてしまってー、もしベンダの回答が『リスクが高いから注意しないとダメだよー』とか『お使いのバージョンではサポートされません!(ニッコリ』とかの回答だったらその抑止したい先方の方が困っちゃうじゃないですかぁ。だから、確認できてから、って言っていたじゃないですかぁ。」
「そういう意味だったのですか?」
「え゛ー。」

「あのですねぇ、そのナレッジの件ですけど、それで抑止しちゃったあとの復旧はどうするつもりなんですかぁ?」
「そのナレッジに記載されていないんですか?」
「(え゛)」


ここまで自分たちの情報をあけっぴろげに教えちゃう気がしれないんだけど。何もメリットもないし、最悪、契約にない作業支援まで自分で広げてしまうことになりかねないし、件のナレッジが使えなかった場合、「じゃあ代替案だしてよ。」何て言うモンスターだったらどうするつもりだったんだろう。


プロジェクトなら違うチームでもお互い様だけど、やっぱり契約でならないといけないスコープとベストエフォートで、とか、自分たちの作業を補完するため、とかテーマによって扱いが違うものがあると思うんだ。決してね、いじわるじゃなくて。やってしまったら責任が生まれるし、勝手な期待もされちゃう。そうした誤解や勝手な期待はコントロールしないと依存されてしまうのでいい加減にやっていてはイカンのですよ。


エンジニアが八方美人になってもいいことないですよ。最悪のケースを考えて行動しないと。