プロジェクトに「目的」と「目標」を設定していますか


無事契約を経て、プロジェクト計画を作成するときに絶対に忘れてはいけない項目に、プロジェクトの「目的」と「目標」があります。何々?そんな項目はないだなんて言わないでくださいね。もしかして、これまでプロジェクトの「目的」「目標」が無くてプロジェクトは上手くやれていたのでしょうか。もしそうだとしてもそれはたまたまのことだし、プロジェクトで判断か難しい局面になったときに指針となるものがプロジェクトの「目的」と「目標」ですなんですから。


いつものように辞書で言葉に意味を確認しましょう。

もく‐てき【目的】
1 実現しようとしてめざす事柄。行動のねらい。めあて。「当初の―を達成する」「―にかなう」「旅行の―」


目的はこのままの意味で、用法としても1つ目、ですね。

もく‐ひょう〔‐ヘウ〕【目標】
1 そこに行き着くように、またそこから外れないように目印とするもの。「島を―にして東へ進む」
2 射撃・攻撃などの対象。まと。「砲撃の―になる」
3 行動を進めるにあたって、実現・達成をめざす水準。「―を達成する」「月産五千台を―とする」「―額」


目標は3つの意味がありますが、プロジェクトの「目標」の文脈から3番目の意味になりますね。目的が実現しようとする事柄、目標が行動のための具体的な基準の意となるので、語彙の関係は、目的>目標で目的の方が抽象度が高いことになります。


では、プロジェクト計画で記述するプロジェクトの「目的」とは何を書くのでしょうか。


プロジェクトの「目的」は、その「プロジェクトが存在する理由」を書く必要があります。なぜ、プロジェクトが存在するのか、それはスポンサーが自らバジェットを用意建て、ベンダやSIerに業務を委託してまで実現したいことがあるからです。


つまり、スポンサーである顧客の実現したい事業課題なのですね。なので、経営や組織の課題が対象になるので顧客が実現したい要件のために極めて抽象的な文言、例えば生産性向上だったり、営業力向上だったりします。それが顧客の実現したいことで、顧客が求めるプロジェクトに対して達成して欲しい「目的」です。


ではプロジェクトの「目標」はどのように設定すればいいのか。


その「目的」をどう達成すればいいか、それがプロジェクトの「目標」となります。情報共有の推進、営業情報の共有や操作性向上と言うような表現ではなく、プロジェクトが実現、達成する水準を含んでいる必要があります。


情報共有の推進ではなく、情報の再利用を10%向上、営業情報の共有による案件の20%増加とか操作手順の50%削減、などの数値や基準の方が目標を達成できたかどうかが達成状況を判断しやすいのでそのように設定する必要があります。


これらの「目的」、「目標」がなぜ必要になるのか、いったいいつ必要になるのでしょうか。それは、プロジェクトの計画を変更する判断をするときリファーする大元の考え方、判断の基準になるのです。


例えば、顧客が追加要件を申し入れてきたとき、顧客の目的、目標を達成するとは一切無関係の追加要件だったとしたら、追加対応をするだけのリソースを割り込ませて対応するのが賢明な判断となるのでしょうか。とても賢明な判断ではないですよね。リスクを自ら増やして、リソースを費やして、時間もすり減らしてしまうだけです。それよりはその分早くリリースしてシステムを使った方が実現したい業務要件に手を付けられるのですから顧客にとっての利益は後者の方が大きいですし。


さて、プロジェクトの「目的」、「目標」は顧客のものだけ、が対象なのでしょうか。


もし、SIerがコストギリギリでも受注して得たいノウハウがあるとか、リスクを取ってでも新規テクノロジーの先行者となりたい目的を持っているとしたら、それはそのプロジェクトの「目的」ではないのでしょうか。


そして、その得たいノウハウや新規テクノロジーはそのプロジェクトを経て得られる経験値をどのように組織のナレッジとしてストックするか、はプロジェクトの「目標」なのではないでしょうか。


これらは、プロジェクトを受注したSIerはそのプロジェクトを通して何を得るかという目標設定をしなければならない、ということを明らかに示しています。答えは、受託したSIerも目的、目標を設定しなければなりません。


プロジェクトをはじめるに当たっては、プロジェクトの「目的」それも顧客と受注したプロジェクトチームと、そして、プロジェクトの「目標」も顧客とチームの、それぞれを設定する必要があるのです。