プロジェクトに新規参入者するメンバの受け入れ −途中参画からみえる差異−

前回のおさらいは プロジェクトに新規参入者するメンバの受け入れ −差異から見えてくる2つの観点− では、プロジェクトの立ち上げメンバとして参画することで関係性や情報に対する差異が暗黙に生じることがわかる、というものでした。


プロジェクト立ち上げ時の参画の立場でまとめたのが表7でした。

表7

プロジェクト立ち上げ時 プロジェクト進行中 差分
「プロジェクトメンバが集まり無の関係から」 「プロジェクトメンバが関係を育て」 関係性の醸成
「契約に関することをインプットに」 「インプットをもとに成果物を作成し」 アウトプットの創出
「計画予算をもとに」 「計画予算を費やし」 リソース(人物金)の消費
「契約期間をもって」 「契約期間を費やし」 リソースの(時間)消費
プロジェクトを開始する プロジェクトを遂行する 作業の進度


プロジェクト途中からの参画の立場で見た差異は?
表7を今度は、プロジェクト途中から参画するメンバの立場で見てみましょう。

表8

プロジェクト立ち上げ時 プロジェクト進行中 プロジェクト途中からの参画の立場で見た場合の差異
「立ち上げメンバによる関係性」 「途中参画者が入ることによる関係性の改変」 出来上がっている関係性への影響
「アウトプットの創出」 「創出されたアウトプットのキャッチアップ」 既存のアウトプットの理解
「計画予算の執行分の消費」 「残存するリソース内での活動」 残存リソース内でのスコープの実現
「経過時間分の消費」 「残存する時間内での活動」 残スコープの実現
プロジェクトの進行 途中参画での急速立ち上げ 急速な立ち上げの期待と現実のギャップ


プロジェクト立ち上げ時のメンバでチームができていますから、メンバ間の関係性もできています。その状態に参画することになります。立ち上げ時のメンバから見れば、出来上がっている関係性−−つまり、明示的暗黙的な運用ルールに従うこと−−に沿うことを期待されています。


一方、途中から参画するメンバはそうした暗黙のルールは知る由もありませんから、関係性を醸成しながら見聞きして学習することになります。


立ち上げ時のメンバ間ではメンバのパワーバランスから明示的暗黙的に関係性が落ち着いていたところに、新たな途中から参画するメンバによりパワーバランスが揺れ動かされることになります。この状態の変化を歓迎するか拒絶するかにより、途中から参画するメンバに対する要求と対応から受けるストレスが影響し合い、新たな関係性を醸成することになります。


2つ目の創出されたアウトプットのキャッチアップは、途中参画者であるか故の、立ち上げ時のメンバが生み出してきたアウトプットを前提知識として吸収しなければならないことを示しています。


その吸収しなければならないアウトプットは何らかの形態、文書や情報として視覚化されていれば表面的な情報として認識することはできますが、認識できる形態にいたった背景や経緯は通常記録されることは多くありませんから、表現される範囲での理解しかすることができません。


3つ目、4つ目は、途中参画する時点までにリソース「人物金」「時間」は費やされており、途中参画の時点では「残存するリソースでしか活動することができない」ということです。


そして5つ目は、立ち上げ時のメンバより、途中参画者に対するメンバとしての立ち上がりは限りなく垂直に要求される、というものです。


これらから何がわかるの?
表8の差異からわかることは、プロジェクトの進度に応じて途中参画するメンバは

・すでに出来上がっている関係へ新たに参入して新しい関係性を作る必要がある
・進度に応じた多くの情報を吸収する必要がある

という2つのアクティビティが暗黙に課されているということがわかります。


あ、これって、前回の最後と同じですね。