会話の中から上司の意図を探る会話

「いま、お時間いただいていいですか」
「どうしました」
「先日説明した育成の件です。現場の進捗をサマッたので見ていただいてから開発の責任者に今後の活動について説明に行こうかと」
「じゃあ、あっちの打ち合わせコーナでやりましょう」

「資料は、開発責任者に説明する為の資料になっています。部長クラスには事前に説明済みです。では、1枚目ですが、予定している計画と今時点での進度です。これは先日もお見せしました。2枚目は直近の育成対象者のサーベイ結果です」
「そのサーベイの基準はどういったものにしているのかな」
「認定レベルを元にしています」
「じゃあ、確固たる基準になっているんだね」
「そうですね」
「それで」
「テーマ1は、基礎スキルです。候補者群の年齢の偏りもあると思うのですがqualifyのレベルです」
「ふむふむ」
「テーマ2は、技術スキルです。これも候補者のデータを基準にプロットしています。テーマ2は1〜2ステップ頑張らないとqualifyに届かないレベルです」
「…」
「テーマ3は、形式知の理解状況です。初心者レベルの形式知は持っていますが、習得時期から大分経っていたり取得量が少ないと思います」

「それでどうする」
「そのアクションがここの図です。適当な育成コースもないようなので、形式知の更新とワークショップで形式知の拡張をするほかないかと」
「それはどんな風に」
「基礎スキルはレベルが高いので、技術スキルにフォーカスしていいかと思っています。なので技術スキルの中で候補者群の伸び代のおおいエリアで形式知とワークショップをやるのかなぁ、と」

「それは1年だけなの」
「いえいえ、そんな簡単に育成できるなら今やっていることは必要ないですよ」
「それでは」
「asisとtobeをおいて、ステップアップさせる計画を作らせるんでしょうね」
「誰に」
「それはもう、候補者のマネージャと候補者自身で」
「じゃあ今もあるんじゃないの」
「そう信じたいですね」

(話が変な方向に行きそう…)

「本心は」
「ちょっとインタビューしてみましょうか」
「裏切られるとしたら何がそうできない状況を作っていると思う」
「マネージャがそれを考え、行動できる時間を確保できていない、でしょうね」
「考えて行動できる時間が取れたとしたら」
「それでも目標の育成はできないと思います」
「どうして」
「育成の仕方を知らない、考えていないからです。全員とは言いませんが」
「どうすべき」
「基礎スキルでも技術スキルでも、asisとtobeをプロットして、較差を目標設定すればいいんです」
「それで育つの」
「継続すれば」
「それって継続していないということなの」
「だって継続して育成しているならワタシがやっているタスクなんて存在しないでしょう」

(あらら、育成の話なのに)

「それってマネージャの怠慢なのでは」
「まぁまぁ、そうは言いません。実態の裏付けがありませんから」
「育成は組織の目標で彼らも候補者が育たないと困るだ。でも一方で自分自身で阻害しているならその障害を自身で取り除くように言わないといけない。それは私の役割だから言うよ」
「それはお任せするとして」
「でも、そういうことなんでしょう、あなたのこれまでのタスクのサーベイ状況からみたら」
「このサーベイ状況をみたら、やることは誰が見ても明白ですから。ただ、実際の育成に関する裏付けは取っていないですし、何をすべきかはワタシの一意見ですから」
「あなたの見解は正しいと思うよ」
「それについてはコメントはしませんが」

(刺しに行くといっているよ、この人)

候補者の育成がテーマでしたがマネージャの育成についても手を出さないといけないようですね。」
「そうそう、全てをあなたにお願いしているわけはないで無理だったらそう言ってくださいね」
「別に範疇外だと言っているつもりはないです。ただ、やってみないとわからないことをやっていると思っているので理解はして欲しいと思います」
「それは大丈夫だから」
「では、想定で話しても仕方がないので部長クラスにインタビューしてみましょう。実際の育成プランはどうやっているのかを」
「そうだね」
「それではインタビューをまとめてからもう一度場を設けさせてください」

(あらら、仕事が増えちゃったよ)
(でもあれだ、育成の話から根本原因にリーチしようとしているなぁ。育成なんてマネージャと候補者の「当事者」の話なのにねぇ。いきなりそこにたどり着いたら、マネージャが刺されるのは明白なんだよなぁ。)