プロジェクトマネジメントの世紀


プロジェクトマネジメントはいつから進化が止まってしまったのか。


PMBOKの初版は1996年の発行だから20年になるわけだ。そのPMBOKも1996年版と2000年版では全く別物ではあるがプロジェクトマネジメントのエポックメイキングとしては1996年版の初版本がでたことだろう。


その意味では、プロジェクトマネジメントは1996年を境にプロジェクトマネジメントという世界が現れたということが言える。1996年以前と1996年以後。PMBOKがでた1996年からの20年の間にPMBOKは第5版まで世に出された。


版を重ねるごとに分厚くなるけれど所詮改良でしかない。家電製品の機能改良と一緒だ。


一方、システムエンジニアの実務に直接関わるシステム開発手法は、ウォーターフォール全盛からアジャイルのXPやスクラムが登場するがそれは2000年代に入ってからここ10年の話でしかない。


それらは確実に広がっているように見えるが、それ自体がシステム開発手法なのであってプロジェクトをマネジメントするための管理の手法の上に乗る手段にしか過ぎない。


顧客の視点で言えば、プロジェクトは事業上の課題解決の手段であって、課題から設定されたプロジェクトの目的・目標を実現するのであればその手段はなんでも良いのだ。


ただ、事業オーナとしてプロジェクトをマネジメントしたいがために管理指標を設け、管理指標によりプロジェクトの健全性を知りたいと思うのである。事業オーナはそれをプロジェクトにオーダする。


それがプロジェクトをマネジメントするための管理の様々なしがらみとなってプロジェクトに落ちてくる。


よくある勘違いは、アジャイルはプロジェクトチームが自律して活動するので全てにおいて自由であるかのように取り違えていることがあるが、アジャイルだろうがウォーターフォールだろうが、プロジェクトのオーナである事業者の管理指標から要求されるエビデンスはレポートするのである。


それは契約によって形となって求められる。契約がある以上、自律してやろうが作業プロセスをガチガチに作ってプロジェクトを推進しようが契約を取り交わす当事者には関係がなく、契約で「合意した」成果物もしくは専門家として果たす義務を全うすることを求められるのである。


PMBOKが出てから20年、変わっているのは実はシステム開発手法のバリエーションでしかない。20年プロジェクトマネジメントの本質は何も変わっていない。


日経コンピュータの調査では2008年では31%、2014年では75%とプロジェクトの成功率は向上している要因にはPMBOKの導入が大きいとある。まさにPMBOKの世紀なのだろうか。


とすると、単にプロジェクトの目的・目標を実現する手段にすぎないシステム開発手法でウォーターフォールだとかアジャイルだとか対峙していることに何らかの価値があるのだろうか。


PMBOKが世に出てから20年、プロジェクトマネジメントは進化を止めてしまったのか。


それとも、いつか次世代のプロジェクトマネジメントの世紀が来るのだろうか。