先輩ってマグロですね

「先輩ってよくスライド作って公開していますよね」
「そうでもないと思うけど」
「ほかの先輩達はほとんど知っていることを自分から公開するなんてしないですよ」
「なんか習慣なのよね」
「習慣にすること自体がすごいですよ」
「そんなに褒めても何もあげないわよ」
「習慣って言われていましたがどうして習慣までになったのですか」
「そうねぇ…きっかけはそうしている先輩を見ていたから…かしら」

「その人は社内の人ですか。まだ在籍されていますか」
「キミも知っている人よ。会社で上から片手に入る偉いおじさんよ」
「そう言われてもそんな偉い人と話すことはないですから」
「それでその偉い人が何をしていたのを見ていたのですか」
「そうねぇ、リーダのときはメンバにノウハウを共有していたり、論文を書いていたり、とかかしら」
「それを見ていて先輩もやろうと」
「そうね、なんかかっこよかったのよね」
「タイプなんですか」
「…どうかしら。当時は若くてかっこよかったけれど」
「アタックはしたんですか」
「彼女いたしね…」

「えっと、今なんか先輩忙しいじゃないですか。でも、新しい技術とかキャッチするの早いですよね。どうやって探しているんですか」
システムエンジニアのお友達が多いからかも。みんなそういった新しい技術に関心があるのよ。そういった情報をお互いにシェアしている形になっているのよ」
「意識が高いんですね」
「ちょっと違うかな」
「どう違うんですか」
「みんな、自分の専門の情報を知ってそれをある程度纏まったらまとめてブログを書いたり、スライドにして公開するの。そうして自分に取り入れた知識を言語化して形式知に変換してストックしているんだと思うの」

「自分のスキルとして取り入れるためのプロセスのアウトプットがスライド、ということですか」
「まぁ、そうなるかしら」
「それでもよく続きますね」
「だから習慣なのよ」
「人にタダで提供していることなりますよね。惜しくないんですか」
「他の人は知らないけれど…はじめた頃に何やっているんだろうなんて思ったこともあったけど、そんなことを思ったのは多分そのときだけね。アウトプットしちゃったものはどうでもいいのよ」
「そんなものですか。なんか勿体ないと思っちゃいますけど」

「続けているとね、インプットして自分の中に取り込む方が満足度が高いのよ。もちろん、アウトプットを見てくれた人からのレスポンスも嬉しいけれど、断然、自分の好奇心を満たしているのは知識を取り入れる方ね」
「好奇心を満たし続けていないと死んじゃうんじゃないですか」
「あはは、そうかもね」
「なんか、サメかマグロみたいですね」
「こらっ、どっちも褒めていないでしょう」