わたしのためにSIerの仕事の面白さを教えてください

「よくネットでSIerをdisってるの多いですよね。この前なんて「富士通を退職した話」が話題になっていましたけど」
「わたしはあまり関心がないわ」
「それはどうしてですか」
「…人それぞれだし。わたしはこの仕事楽しいもの」
「仕事が楽しいんですか。わたしなんて大変だし夜遅いときも多いし他の仕事だったらどうなっていたかな、なんて思うときがあるんですよ」

「だったら他のお仕事をやってみたら」
「またそんな突き放すような。やめてください、先輩みたいに強くないんですから」
「そういうつもりではないよ。SIerでも色々な仕事があるんだから自分で楽しめそうな仕事をやってみたっていいのよ」
「先輩はどんな仕事を経験してきましたか」
「開発のSEはもちろんだけれど、プロジェクトマネージャや提案や見積もり、マネージャのみたいなこともやったかしら」

「あ、仕事といっても役割的なものなんですね。どれが一番楽しいですか」
「どれも楽しいわよ、SIerの仕事は。そうねぇ…別にSIerの仕事だから楽しいってわけでもないのかも」
「それでは身も蓋もなくなっちゃいます。SIerだからこそ楽しいっていう仕事はないですか」
「なぁに、どうしてもSIerの仕事が楽しいとかSIer仕事が天職よとか言わせたいの」
「そういうことではなくてですね、わたしも先輩みたいに頑張ってみよう、と思えるようなお話を聞きたいな、みたいな」
「ほら、それは人それぞれだから」

「もう…それは棚にあげてください。わたしのためにSIerの仕事の面白さを教えてください」
「そうねぇ、本当にどれも楽しいのよ、SIerのお仕事。逆にどうして楽しめないのかの方がわからないわ」
「えええっ」
「では教えてくださらない。お仕事の何があって楽しめないのかしら。何かあるのでしょう」
「まさか、先輩から質問返しをされるとは…」
「聞こえているけれど」
「ひゃっ、すみません」
「それはいいのだけれど、教えてくださいな」

「大規模のプロジェクトに参画すると方眼紙excelだったり、閉鎖空間で調べ物も不自由だったり、プログラムを1行直すのに1センチくらいのテストエビデンスを揃えたり…なんかだんだんと辛くなってきました」
「そうねぇ、そういうプロジェクトもあったわね」
「そうでしょ、先輩だって辛い思いされたんですよね。ですよね、よかった…」
「でも、辛くなんてなかったわよ」
「えええっー」
「はじめはなんでこんな非効率なことやっているのだろうと思ったので周りのリーダさん達に聞いて回ったこともあったわ。でも、誰も知らないのよ。なぜそんなやり方をやっているのか」
「またまた」
「ほんとそうなのよ。前例を踏襲しているだけなの」
「…」
「でもね、あるとき分かったの。これは方眼紙excelがいいかは別にして、そういう手法を取っているかが」
「何が分かったのですか」
「プロジェクトの品質特性を満たそうとすると何らか作業を標準化しなければならなくなるの。二人だって持っているスキルやレベルに違いがあるのだから同じ品質のアウトプットにはならないのよ。それを100人、1000人となったらどうなるか想像がつくかしら」
「なんか怖いです」
「そうね、プロジェクトマネージャからみたらあなたも怖い方の人だったのよ。ただ手段はあるのになぜ忌み嫌われている方法をとるのかしら」
「どうしてでしょう」
「参画するシステムエンジニアが手段を変えてしまうとついてこれないからよ」
「なんかすごいブーメランですね」

「話を戻すけど、じゃあ自分がプロジェクトマネージャならどうしよう、自分がアーキテクトだったらどんなデザインにしよう、どんな提案にしようと思うよにしたの。そう思うようになったら色々と知りたいことが増えたのね。それで調べて、できるようになってを繰り返しているうちに楽しくて仕方がなくなったのよ」
「なんかポジティブすぎてついていけない…」
「あなただって仕事を楽しくしているときだってあるでしょう」
「たまには」
「それを広げられればいいのよ」
「楽しみ方を広げる…ですか」
「そうね、自分の楽しい仕事のやり方を見つけるのよ」
「難しそう」
「そんなことないわよ。些細な、小さな楽しみ方でいいのよ」
「今日、1つ知らないことを知ることができた、とかですか」
「そう、そんな感じよ」