先輩、プロジェクトマネージャって何が楽しいんですか

「先輩はいつも笑顔ですね。今なんてそれほどニコニコしていられるほど順調に思えないんですが」
「そう、シナリオからそれほど外れていないけれど。何か問題を知っているなら聞かせて」
「なにか問題を知っているわけではないですけど、でも、作業も山場、みたいな感じですよね」
「それだけ作業が明確になっていてるからそう感じるのかもね」
「それはそうかもしれませんけど」
「でも、毎日笑顔ですね」
「だって、わたしが切羽詰まっていたらみんなに伝染してしまうでしょう」
「それもわたしの課題なのかもしれないのに、それでみんなが気になっては仕事も儘ならないでしょう」
「そうですねぇ…確かに、気になって手につかないかも」
「笑っていたらどうにかなるものよ」
「そんなものですか」
「そんなものよ」

「一見、達観しているみたいですけど、そんな世界に入ってしまうと楽しみなんてなくなったりしませんか」
「そうでもないわよ」
「例えば昨日は何か楽しいことありましたか」
プロマネとしてかしら」
プロマネとして、で」

「そうねぇ、気になっていた課題が1つクローズしたじゃない。想像してた結果どおりに決着したから、あれはちょっと嬉しかったかな」
「他には」
「先週、仕様を検討しているときに盛り上がったことがあったでしょう」
「割とバトルしますものね、このチーム」
「バトルって…そう、バトルでもいいけれど、あれ楽しかったでしょう」
「そうですか、なんかA案とB案でどっちを押すかでかなり声も大きくなっていましたけど」
「元気があっていいじゃない」
「わたし、ああいう経験仕事ではないかも」
「喧嘩しているわけではないから」
「そうですが」
「でもね、議論になっていたでしょう。それだけメンバが集中していたということなのでは」
「そうかもしれませんね。でもあれのどこが楽しかったのですか」

「え、わからないの。今の会話で」
「…ちょっと…わからないです」
「そう、全員で意見を言えていたでしょう。そういうチームを作りたいといつも思っているのよ」
「それはキックオフでも聞いたような」
「そうね。で、ちゃんとできているじゃない。みんなのおかげだけれど」
「そういったところにアドレナリンがでるんですか、先輩は」
「アドレナリンかどうかはわからないけれど、楽しいわ」
「どうして楽しく思えるのかなぁ」

「不思議に思えるかしら」
「不思議です」
「じゃあ、あなたもプロジェクトマネージャになったらいいのよ」
「えぇー、それはないです。無理ムリ。ゼーッタイ無理です」
「わたし、あなた向いていると思うわ」
「やめてください、変なフラグ立てないで」
「そうか、そういうことね。じゃあ、何かお願いしないと…」
「まさか、それもプロマネとしての楽しみじゃないですよね」
「後進育成もプロマネの一つの仕事よ」