センパイと良いプロジェクトの条件と
良いプロジェクトは次の条件を満たしている。
「センパイ、毎回プロジェクトのキックオフミーティングを開くじゃないですか」
「え、そうだよ。やるよ」
「プロジェクトのキックオフのタイミングって半端なく忙しいじゃないですか。わたしもプロジェクトの頭から参画するようになって知りましたけど」
「そうだね、プロジェクトの中で一番忙しいかもしれないかな」
「もう少し時間が経ってからでもいいんじゃないですか」
「それはだなぁ、ダメなんだよ。このタイミングでやらないとさ」
「なんですか、わたしが忙しいセンパイを気遣ってあげてるのに」
「それは済まない。もう少し上手になれるといいんだけど」
「別に謝って欲しいんじゃないですよ。でもどうしてこの時期じゃないとダメなんですか」
「それはさ、同じ目標に向かって進むため、だよ」
「同じ目標ですか。最後は作業分担するんだから目標なんて一人ひとり別になるじゃないですか」
「そうでもないよ、同じプロジェクトに参画しているんだからさ。同じ目標に向かって進むんだよ」
「そういうもんですか」
「そういうもんです」
「でも、そのためのこの時期のセンパイは超忙しいじゃないですか。不公平と思わないんですか」
「ふこうへい?ん、作業が大変だから、かな。そう見えちゃうのは申し訳ないな。まだまだ洗練されていないってことか」
「実際、夜まで仕事しているじゃないですか」
「それはさ、役割としてこの時期にたくさん仕事が集中しているだけだよ。先に行ったら今度はみんなの方が忙しくなるしさ」
「それって、トータルでみたら一緒って言っているんですか」
「まあ、そうかな。役割に応じた作業があるからさ」
「でも…」
「オレの感覚だとプロジェクトに参画するメンバは、同じように貢献して貰うし、同じように恩恵を受けるようにしているんだよ」
「同じように貢献って」
「役割に応じて貢献してもらっているということだよ。誰かが、例えばオレだけが楽になるようには分担していないってこと」
「いろいろ考えているんですね、センパイのくせに」
「褒めらているのかな」
「勘違いしないでいいですから」
「あ、褒めらてる…ぐぇっ」
「あらごめんさない。急に肘が」
「うそつけ。無理ありすぎだろう」
「本当ですってば。それで同じように恩恵を受けられるためにはどうしているんでしたっけ」
「話をごまかしたな…恩恵だったっけ。恩恵はさ、同じルールで仕事をするんだよ。それだけ。依怙贔屓しないだけ」
「真面目というか…馬鹿正直なのかしら。プロジェクトマネージャーなんだから好きにやればいいじゃないですか」
「いてて、自分でルール作って自分でルール破ったらどうしようもないじゃないか。自分で守れないルールを強要するわけにはいかないんだよ」
「そう言えばそうかも」
「そうだよ」
「どうした急に静かになって」
「なんで同じルールにするんですか。確かに自分で作ったルールを守るというのはわかるけど。他に何かあるんじゃないですか」
「そうだなぁ、あえて言えば、メンバを尊敬するため…かな」
「センパイから尊敬なんて言葉が出てくるとは思いもしなかった…衝撃的」
「うそ言え」
「本当ですってば」
「それ褒めてないからな」
「あ、しまった…。じゃない、尊敬って」
「お互いが尊敬できる関係がないとさ、プロジェクトはうまくいかないんだよ」
「どうして。お仕事じゃないですか」
「それだと、分担に溝を作るんだよ。分担なんて言葉でしかないからな。実務は案件ごとに必ず調整するんだよ。その調整をお互いカバーし合うためには信頼も尊敬も必要なの」
「なるほどねー、センパイとしてはよく考えて行動しているんだ…」
「いちいち手厳しいな」
「でもでも、考え方ってみんな違うじゃないですか。意見も合わないときだってあるし」
「そうさ、だってシステムエンジニアとしての育ちが違うからな」
「そういったことはどうするんですか」
「ん、そういうときはそうした考えを認めるんだよ。その上で、かみ合っていない議題だけで話をするの。それぞれの背景は全部棚に上げてさ」
「そうするとうまくいくんですか」
「そうだね。だって議論する対象が限定されるからね」
「なるほどねー。センパイ、えらいえらい」
「これ褒められているの」