センパイとアウトプットゼロのメンバと

アウトプットがゼロのメンバはどう頑張って支援しても1月後に1にはならない。


「おはようございます、センパイ。今いいですか」
「ああ、おはよう。どうしたの」
「ほら、パートナーのAさん、今日はどうしたんですか。まだ来てないみたい。いつもは早いのに」
「あ、それはココでは話せないな。えっと、あっちで話そう」
「なんでですか」
「おいで」
「はーい」

「Aさんだけど、退場してもらった」
「退場、ですか。たいじょう…ん、えっと」
「プロジェクトチームから出て行ってもらった」
「クビにしたんですか…」
「そういうこと」
「また何で…ってわからないことないですが」
「そういうこと」

「いつ決めたんですか」
「参加してもらって2週間目ではダメかなーって薄々思っていたけどね」
「そんなに早くから」
「いやいや、3日目くらいから怪しいなーって思ってたんだけどさー」
「3日目で…。随分手間がかかっていたようでしたし」
「要求したスキルもレベルもあるっていっていたんだけどさ、若手のSEさんの方が優秀だった。値段もね、アウトプットに見合っていないし」
「厳しい世界なんですね」
「いや、そんなことない。普通の商取引」
「商取引なんて。ものじゃないんですよ、センパイ」

「いやいやそっちの方が間違っている。契約で役務を提供願うのだから商い。契約した役務が提供されないなら契約不履行。これ常識」
「そんなものですか…」
「アウトプットがないならいる必要はない。というかさ、アウトプットがない人がいるということはその人が存在するだけで余計なオーバーヘッドが生じる。そんなコストかけるような余裕はないし、そんな人に支払うコストなんて計画していない」
「理屈はそうなんでしょうけど」
「理屈じゃないってば。逆に若手SEにAさんとの単価の差分を払ってもいいくらい」
「そうするんですか」
「何か理由があればそうしてもいいけど」
「しないんだ」
「Aさんの代わりが必要だから代わりの人が見つかったときに取っておかないといけないし。でも見つかるかなぁ」
「人は見つからないんですよね、センパイ」
「それでも、頭数を揃えればいいってもんじゃないからな、SEは」

「Aさんはいきなりクビって言ったんですか」
「そんな乱暴なことはしないよ。あとで揉めないようにエビデンスは揃えたし、対策をする時間は取ったし、先方の会社に申し入れもしていたし」
エビデンスってなにを」
「作業の説明とか作業計画や実績に対する対応をお願いしたものとかさ、そういうの」
「それでAさんだけやたらメールが多かったんですか。そういことだったんですね」
「一番わかりやすいし。時刻残るし」
「怖いなー、大人の世界って」
「目の前に一番怖い人がいるけどな」
「何か言いましたか、センパイ」
「いやいやなにも。なにも言っていません」
「ならいいんですが」