センパイとレビューコメントとドーナツと
自分が作ったものに対してコメントを付けられてイライラしたり、カーッとなってしまうなら、それはその作ったものが不完全であることを自分自身が知っているから。
弱みを突かれると人はそれを守ろうとする。
でも仕事の成果なら、コメントを有り難くいただいてよくしたほうがいいんじゃないかな。
「いちいち細かいですね、センパイ」
「しょうがないだろう、それだけ間違いが多いってことじゃん」
「直す身にもなってください。これだけ真っ赤っかになったら1時間じゃ終わらないじゃないですか」
「そんなの知らんがな」
「もう…あとどこですか、指摘は」
「整理すると、構成はテンプレに従うこと。言葉で明確に書けないなら図表に変えること。最後にてにをはをチェックすること」
「えー、そんなに…無理です。これでいいじゃないですか」
「ダメ」
「どうしてですか」
「オレがお客さんに説明しきれない」
「じゃあ、私がします」
「そっちのほうが無理。玉砕する。今日中に直してね。次は期待しているからさ」
「センパイ…終わりました…。エネルギー切れたのでなにか奢ってください」
「えらいえらい、じゃあ、いまパッと見て直っていたらドーナツ奢ってあげよう」
「わっ、ホントですか。じゃあ行きましょう、ドーナツとカフェに」
「こら、待て。直したの、見てから」
「はーい。ちょっと待ってね、ドーナツちゃん。えっと、これこれ」
「ページスクロールして。うん、第一関門クリア。お、だいぶわかりやすくなったじゃん。やればできるじゃん。最初からやろうよ」
「褒めているんですか、けなしているんですか」
「褒めている…んじゃないかな」
「なんですか、その言い方。次見てください」
「じゃあ、もう一度頭に戻って。そう、ちょっとまって、いいよ、進めて…ストップ。ここ直して。メモとって、ほら。次のページ…」
「ここまでです、センパイ」
「幾つメモった」
「いち、に…6つです」
「多いというか、少なくなったんだけどなぁ」
「ドーナツ…」
「いいよ、ドーナツ買いに行こう。食べたらまた続きやろう」
「いいんですかー…でも続きやるんだ」
「選択権をあげよう。ドーナツを食べて直す。もしくは、ドーナツを食べずに直す」
「はいはい、ドーナツを食べて帰ります」
「それはない」
「だめですか…」
「ほら、行こう」
「はい。ま、いいか。ドーナツ、ドーナツ」
「自分の作ったものにさ、魂入れちゃだめなんだよ」
「いいじゃないですか、心がこもっていて」
「心を入れちゃうと直しづらくなるだろう」
「分身ですから」
「限られた時間の中でアウトプットしなきゃいけないんだから最短で必要なものを作らないとさ」
「ドライですね、センパイのくせに」
「そうしないといくら時間があっても終わらないだろう。帰れなくなるぞ」
「それは嫌です」
「だからルールがあるんだよ。ルールを守るの。これはレビューアの余計な時間を取らないってことでもあるんだよ」
「それはすみません」
「謝らなくていいから、次からは守ること、いいね」
「がんばります…」
「それと魂いらないから、その分、よく考えてから書き始めよう。そうそう前に言ったようにラフを描くよいいよ」
「そう言っていましたよね…そうします」
「さぁ、ドーナツ食べたらあれだけ片付けちゃおう」
「はーい」