お姉ちゃんと生徒会チーム運営と
「ただいま。このパンプスは…」
「よっ、元気してた」
「お姉ちゃんどうしたの。何かあったの」
「いやね、用事は特になかったんだけど、週末作業が予定より早く終わったので寄ったの」
「そうなんだ」
「妹ちゃんは元気してた」
「いろいろとねー。学生も大変なんだよ。しがらみとかさー」
「田舎の方が大変だよね。世間は狭いからねー」
「そうそう。生徒会もみんな予定どおりにやってくれないし大変なんだよ」
「妹ちゃんは生徒会やってたんだっけ。それはご苦労様。何か悩みでもあるのかな。お姉ちゃんがコンサルティングしてしんぜよう」
「変なお姉ちゃん。仕事も出そうなの」
「お仕事はおしごと。おうちはお家。TPOよ」
「なに、そのTPOって」
「スマホは何のためにあるんだね、妹ちゃん」
「めんどくさいよー」
「興味は自分で見つけた方が楽しいんだからさ。面倒だと思ったら、それはもうしごとになっているからさ、あとは体力だけあればやれるからね」
「なんかお説教されてるみたいじゃん、もー。久しぶりに妹と感動の対面をしているんだからもっと優しくしてよー」
「じゃあ優しく悩みを聞いてあげよう」
「そう、じゃあおねがいしてみようかな」
「あれ、素直だね。これは重症ななやみかしら」
「どうやったら生徒会の仕事をみんながやってくれるようになると思う」
「妹ちゃんはどうなったら一番嬉しい」
「そうだなー、みんなちゃんとやることをやってくれればいいと思う」
「もっと具体的に教えて」
「分担したことはやってほしいなぁ。せっかく考えてやってもらうようにお願いしたんだから」
「…妹ちゃんはみんなが分担をやってくれればいいのかな」
「それは期限まで、とかもあるよ」
「みんなの仕事はみんなで決めたのかな。それとも妹ちゃんが分担を決めたのかな」
「なんかさー、どうするって聞いても誰もいけんいわないんだもん。いつもそう。だから…」
「それは大変そうだね。よしよし、頑張ってるんだね。えらいえらい」
「やめて。ヘアスタイルがくずれる」
「ごめんごめん。つい小さいころの妹ちゃんを思い出しちゃって」
「それで、お姉ちゃん。何か秘策でもあるの」
「そうだなぁ。期限まではどのくらいあるの」
「ひと月とちょっと」
「仲間は十分かな。それとも足らない」
「まあまあいる」
「その分担している仕事はこの人じゃないとできないっていうのあるかなぁ」
「そういった仕事はないと思うけど」
「…そっか。うーん、そうだなぁ…そうねぇ…こうかなぁ…」
「どう、お姉ちゃん。なんとかなりそう」
「よっし、こうしよう。あ、でもお姉ちゃんが妹ちゃんの立場だったら試してみるくらいだよ」
「いいよ、教えて」
「一つ目は、その仕事の分担をなかったことにする」
「え、せっかく決めたのに、分担をなかったことにするの」
「もうちょっと聞いてからね」
「二つ目は」
「ちょっとまって…まって。えっと、あ、いいやスマホのメモで。えっ、一つ目は…はい。どうぞつづけて」
「二つ目は、分担したい仕事をみんなで何が終わったらおしまいと言えるかを決めます」
「どうして。分担決めたらそれで十分じゃないの」
「もうちょとまってね」
「ごめん」
「いいよ。三つ目は自分からやりたい仕事を選ぶようにするかな」
「だっていつも決まらない…」
「多分、今度は決まると思うんだけどね、お姉ちゃんは」
「すごい自信。大人は違う。でも、どうしてこれでちゃんとやれるようになるの、の。どうして」
「自分で考えてみたほうがいいと思うよ、お姉ちゃんとしては」
「もう、ずるい。教えて」
「甘えん坊は変わらないね」
「いいじゃん、長所なの」
「妹ちゃんのやり方は、仕方がなくてそういうやり方になったんでしょう」
「そう。それがいつの間にかいつもこのやり方でやっている」
「みんな妹ちゃんから支持されるやり方に馴染んじゃったんだね。それを変えたらいいと思ったの」
「へぇ、すごいね。そんなふうに考えたことなかった」
「もしかしたらね、みんな自分で仕事を選びたいんじゃないのかな。そう仮説を立てたのね。でも、いつも妹ちゃんが準備してくれるからそれに乗っているのかなって」
「そう準備しないと帰りが遅くなるんだもん」
「そうだね。でね、何をすれば仕事が終わるか、どんなスキルを持っていれば仕事を終わらせることができるか、自分の持っているスキルならその仕事がどのくらい時間が必要かをみんなが知ったら自分で選べるんじゃないかって思ったの」
「なんかすごいこと考えているんだね、お姉ちゃんも」
「普通だけどね、大人の仕事をしているとね」
「これで上手くいくかな」
「上手くいくと思う」
「そうかな、上手くできるかな」
「妹ちゃんならできる」
「ありがとーやってみる」