人月商売がエンジニアをすり潰す
SIerなどに見られる人月商売はエンジニアをすり潰すのです。すり潰すのはエンジニアが持っている技術を、です。
では、なぜすり潰されてしまうのでしょうか。
人月商売の値段付け
人月商売は、エンジニアを月単位に値段をつけて売るビジネスモデルです。大体は、松竹梅のような3ランクなどのランク分けをして値付けします。
いい加減なSIerだと売りたい価格にエンジニアを紐付け、売った先に送り出してしまいます。真っ当な(?)SIerであれば、エンジニアを技術評価してランク付けをしなければ顧客からクレームが来るのでそうしたことが起きないようにするものですが…。
いづれにしても、月単位に値段がつけられているところがポイントです。
買う側の理屈
エンジニアの技術料に対して費用を支払う取引とは思っていません。人月商売は、月あたりの費用ですから1ヶ月に160時間(8時間勤務*20日)の稼働ができる場合、160時間働いてもらうつもりで買っています。
これは買う側の仕事だけで160時間成果を出してね、ということです。
160時間稼働して起きること
顧客の業務で160時間稼働するということは、1ヶ月の稼働全てを顧客のために使うということです。今持っている技術を投入し続けるということです。
ところで、世の中の情報技術の進化は早いですね。さて、160時間という月単位で売られたエンジニアは一体いつどこで技術の更新を図ればいいのでしょうか。
例えば、SIerで技術研修を用意していたとしても、顧客からは今持っている技術で実現したいことがシステム化できてしまうなら、使う予定もない新しい技術の習得に対して魅力を感じるでしょうか。
エンジニアの善意に頼るのは間違い
エンジニアになったのだから、生涯勉強は続けなければ世の中の技術革新に遅れてしまうのだから、自ら率先して技術習得をするべきだ、みたいなことを言う人がいたら、
「お前はどのくらいそれに時間をかけているのか話してみろ」
と小1時間くらい問い詰めたいですね。
まあ、勝手に勉強会に行ったり、技術書を読んで新しい言語を習得したり、クラウドサービス環境で遊んで見たりするエンジニアも多少はいることはいますが、そうしたエンジニアは稀です。
それにそれはそのエンジニア本人の意思でやっていることでそれを仕事にフィードバックする義務もありません。
技術更新をさせなければスキルがロストテクノロジーになる
エンジニアの技術更新はエンジニアが組織のリソースであると位置づけるのであれば組織が対応すべき仕事です。
ですが、人月商売で月単位でエンジニアを売っているビジネスをやっているSIerには、エンジニアには大切な財産であると言いながら、160時間の稼働を下げると間接コストが増える要因になるので技術更新をするようなことはしませんし、やっても特定のエンジニアに対してだけ行うことで直接コストと間接コストの比率に大きな影響を与えないようにするのです。
結局、人月商売をしているようなSIerでエンジニアの技術更新を積極的にしない組織は、エンジニアの持っている技術は古く陳腐化し、ロストテクノロジー化するのです。
参画時はそこそこだったとしても、時間が経てば持っている技術は目減りし、技術そのものが擦り切れ空になってしまうのです。