技術発表のスライドの構成の意図がやっと理解された話

エンジニアをしていると、技術成果を発表する機会があると思う。組織内でもいくつかの成果発表の場があり、そうした場への発表がエンジニアのキャリアデザイン上の加点になっている。

エンジニアがスライドを作る機会自体は多い。提案書、仕様検討、報告資料などプロジェクトで資料を作った数なんて数えてられないくらいに。

ではそうした資料の作り方をどこかで教わる機会があるかと言えば、実はない。論文を書いていれば指導教官や上司に赤ペン先生をしてもらうので指導された、と言えるのかもしれない。

ところがツールがWordからpowerpointに変わる途端、資料づくりは自由になる。最低限のフォーマットは(既存の資料のスライドデザインを踏襲するという意味合いで)似た構成になる。

例えば、表紙、目次、自己紹介、スライドテーマ、endページで構成されていることが多い。

 

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メンバが成果発表をする機会があり、上記のような構成でスライドを作ってしまってからダメ出しにならないようにしようと思って摺り合わせの場を持ったのに、メンバに伝わらず回避しようとした構成でスライドの作成を進めてたことがわかった。

なぜわかったかというと、摺り合わせ後に、摺り合わせで合意した(はず)の構成で書けているか、全体の構成を確認するスケジュールを入れていたからだ。

まあ、見せてもらったら前回のすり合わせは何だったのかと思うくらいに上図の構成まんまだった。

スライドにありがちな問題

やってしまったことは仕方がない。構成をなぜ変えないといけないかを理解してもらうことが2回目の摺り合わせの目的となってしまったとしても。

上図の問題点は、3つある。

  1. テーマ1から最後のテーマ5までを全部聞かないと何を言いたいのかメッセージが理解できない
  2. 最後まで聞いているうちに最初のテーマを忘れてしまう
  3. 一番いけないのはどこまで頑張って聞けばいいのか見通しがわからない

どれも話す側の立場に立つと拙い。スライドを理解してもらえないと発表の評価に響くし、肝心なことを覚えてもらわなければ発表する側の苦労も水の泡になるし、いつまで続くかわからないスライドを見せされることほど辛いものはない。

 

自己紹介

フォーマットとして自己紹介のページを入れていることが多いが、無意識で入れていないだろうか。

自己紹介はこれから発表するテーマについて専門性をアピールする最初の掴みである。専門性をアピールすることで発表に対する聴講者に期待を持たせることができる。さらに、ここで笑いを取れれば緊張感から解放されて発表しやすくなるだろう。

自己紹介と乾杯の挨拶は短く、要約しよう。

伝える相手は誰か

 聞いてもらう対象のセグメントを設定することは大事なことだ。想定する聴講者に響くように、つまり、聴いてもらい伝えたかったことを伝えなければならないからだ。

スライドを作っている目的がそれであるのだから。

同じエンジニアに聴いてもらうのか、年代はどうするのか。技術レベルはどのレベルか。それをスライドを作る前に決める必要がある。これをせずにスライド作りを進めてしまうと総花的になってしまうのだ。

何を伝えるのか

このスライドで何を伝えたいか。このページがないままスライドを作ってはいけない(発表時に落としても構わない)。

なぜこのページが必要か。それはスライドを作るエンジニアがスライドを作っている間に自分が書きたいことを書き始めてしまうからだ。

案の定、2回目の摺り合わせで見せてもらったスライドはスライドを作って聞いてほしいことではなく、メンバが作りたいことばかりになっていた…。そうしないために摺り合わせをしたのだが、結局、理解されていなかった。

2回目の摺り合わせで最初に何度も尋ねたことがある。それは、このスライドで何を伝えるか、だ。「何を伝えたいのか」「今作っていたテーマはそれに合っているか」と何度も尋ねやっていることを理解させなければならない。

モデル

さて、聴講者のセグメントと伝えたいことを明確にしたのでスライド作りを始めていいかと言えばそうは問屋が卸さない。

この後、いくら伝えたいスライドを作るにしてもエンドのページまでずっと同じ調子でスライドが続いてしまうことはダメだ。

伝えたいことを概念化して体系化した形式知にしなければいけない。概念化することでモデルに置き換わる。

モデルは発表しようとするエンジニアが考えているエッセンスである。スライドの価値は、実はこのページだけ見れば良い。後に続くページは詳細の解説になるからだ。

端的に言えば、モデルのページ以降のサマリである。

ではなぜここの場所に必要なのか。それは聴講者を飽きさせず、迷子にさせないためである。言い換えればスライドに集中させるためのガイドの役割をするからだ。

 

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アウトラインを使う

こうしたスライドの作り方は難しいと思うかもしれないが、ついついスライドを作っていると楽しくなって詳細なテーマばかりに手をかけてしまわないようにする方法がある。

それはアウトライン表示を使い、アウトラインから作れば良い。もし、アウトラインを書いているときに具体的にサンプルを見せたいとかキャプチャを入れたいと思いついたら、ノートに書き込んでおく。

とにかく、アウトラインを完成させよう。

 

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 この2回目の摺り合わせの場でやっと1回目の摺り合わせの意図が理解された。あとはメンバに任せよう。

 

 

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