AWSエンジニアの恩返し
二人のシニアエンジニアで切り盛りしている維持管理プロジェクトがあった。リーダ役のエンジニアが久しぶりに本社に戻り、事務処理をしていると協力会社のIDを下げた若手の女性エンジニアが上司にこっ酷く叱られて、そのあと暫く肩を震わせているのが目に入った。
若手の、それも女性のエンジニアを見かけたのは数年振りだったので、珍しく声を掛けて事情を聴き、それなら今月手が足りなくて困っていたからうちのプロジェクトに参加したらいいと、優しく慰めた。
名前と所属を尋ねると以前一緒に仕事をしたことがある人が上司だということがわかったので、上司役のマネージャに挨拶がてら暫く若手エンジニアに手伝ってもらいたいと伝えたところ、渋っていたが押し切った。
激しく雪が降り積もる月曜の朝、若手の女性エンジニアが維持管理プロジェクトの常駐先にやってきた。
もう一人いるエンジニアに事情を共有しようと若手エンジニアに最近あったことを話してもらうと、上司のマネージャに叱られ、今は仕事も外されたというので快く維持管理プロジェクトに迎えた。
維持管理プロジェクトは珍しくインベント的な対応が必要でタスクがなかなか減らない一方、若手エンジニアは戻っても仕事があるわけでもなかったので毎日その常駐先にやってきた。
若手エンジニアは二人のシニアエンジニアの作業を甲斐甲斐しく手伝い、二人を大そう喜ばせた。
数日後、若手エンジニアは今更自社に戻るよりここの常駐先で働かせて欲しいという。リーダ役のエンジニアはずっと顧客からリソースを増やして対応を早くして欲しいと言われていたので予算をいつでも執行できる状態だったので喜んで承知し、顧客に諸手続きと見積もりを出した。
その後もシニアエンジニアを助けていた若手エンジニアがある日、「ちょっと、ツールを効率化したいので顧客に承認をもらってきてほしい」といい、承認をもらってくると「ツールを作っている間は会議室を覗かないで欲しい」と言い渡した。3労働日後に出来上がったツールはこれまで手作業でテストしていたテスト実施を自動化したものだった。テストの進捗が早く、正確になり、顧客の評判が良かった。
「また効率化を図りたいので顧客にこのツールの使用許可をもらってきて欲しい」と頼まれ許可をもらってくるとリリースまでを自動デプロイするツールを作り、顧客が承認メールで承認を押下すると環境にデプロイする仕掛けになっていた。
維持管理プロジェクトはタスクが徐々にDoneして、プロジェクト単体での収益も残業が減ったため好転化し始めた。
しかし、若手エンジニアが3つ目の効率化のために会議室に篭ると、すっかり冷めていた技術への欲求が焼け棒杭に火が付いたリーダ役のシニアエンジニアは、どうしてこんなにも若手なのに効率化ができるのだろうという好奇心が押さえられず、端末にパケットキャプチャツールを仕込み、何をしているか覗いてしまう。
若手エンジニアの姿があるはずのそこには、AWSのエンジニアがいた。AWSエンジニアは自分でAWSサーバに環境を構築し、自分のクレカで身銭を切り、効率化を図るツールを作っていた。
驚いてシニアエンジニアが会議室に入ると、自分は自社には内緒でJAWSでいくつかの講演したことがあるエンジニアで、ちょうど助けてもらったときにたまたまやらかしてひどく叱責されたところを助けてもらったのだという。暫くここで勉強がてら、お世話になろうと思っていたが、正体を知られてしまったのでここを去らねばならないというと、環境をパージするalexaスキルを発動して、常駐先を後にしてしまった。
このお話は次のエントリを参考に作ったものです。
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