コミュニケーションスキルはたったひとつの目的のために必要となるのである
コミュニケーション能力は学校に行かなくても身につけられるとか、学校に行った方が身につきやすいとか、書かれているようだが、学校や職場のような『場』話をすると、実利のあるコミュニケーションスキルは手に入れられないと思う。
自分のことを振り返ってみると(読者にとって全く役に立たないが)、義務教育での自分のコミュニケーションスキルは全く無いようなものだ。高校で少しマシになったのは、アルバイトをしたときの周りの大人が高校生の自分に対して子供だからと見えない配慮(周囲がこちらに合わせてくれていたのだろう)があったからだと思う。どうしてそう思うかというと、学校に行けば、やはり嫌な思いをしたことがあるからである。
大学生になればどうかと言えば、五十歩百歩でそれまでの自分をだいぶ引きずっていたから、ゼミでも周囲にはかなりコミュニケーションでの負担をかけていただろう。
社会人、エンジニアの採用では、コミュニケーションスキルを持っている学生を採用しようとする。それは、顧客とコミュニケーションを取り、チームメンバと協調しながら仕事を進める必要があるからだ。プロジェクトマネージャやマネージャに至っては、その仕事の7-8割はコミュニケーションだと言われている(30年前も同じようなことを聞いた)くらいだ。
エンジニアに採用されたのだから、コミュニケーションスキルはどこかでよくなったのかと問われても、そうだとは言えない。エンジニアになって、10年も経ってから同じチームだったかなり年上のマネージャ相当の方から窘められたことがあった。
窘められて、そこから少しコミュニケーションの取り方に気をつけるようになったのだが、自分で自分が考えるようなコミュニケーションを取れるようになったのはその先だったのではないか。
コミュニケーションとは、何か。
なぜコミュニケーションを取らなければならないのか。
コミュニケーションは何のために必要なのか。
自分の場合は、自分の仕事に対する終わらせようとする思いを持てるようになったとき、コミュニケーションスキルが必要な理由がわかった気がする。
コミュニケーションは、何かを実現しようとするとき、それに関係する人たちの振る舞いを変えたり、動かして結果を持ってきてもらうために必要なスキルである。
だから、それに必要なのは場ではない。
必要なのは、自分の仕事を終わらせようと考える思いなのである。その思いがあるから、関係する人たちを気持ちよく動いてもらうためにはどう接すればいいか、こちらがどう終わらせたいかを同じ風景を観て共有できるか、困らないためにできる支援はあるか、など、進捗上の障害を取り除くことをするのである。
話を少し戻すと、エンジニアにコミュニケーションスキルを求めるのは、仕事を終わらせることができる人を採用したいからである。仕事を終わらせられなければ、お金をもらえないからね。
コミュニケーションスキルは協調性を求める社畜のスキルだ、感情を的確に伝えられる必要がある、などと言っている人には近づかないようにした方がいい。なぜかを聞けば、一見、最もらしいことを言うだろう。あなたの考えはそうなんですね、くらいで受け流そう。
コミュニケーション自体が手段なのであるから、そのやり方、それに対するアプローチはその人ごとに違う。ただし、コミュニケーションをとる目的はひとつである。
それがわかっていれば、それを達成できるように実務で繰り返し訓練するほかない。