内部留保は積み上がるのに開発力が萎縮する

だいぶ前に、組織の決算が翌月の数日でできるようになったと聞いたとき、凄いものだと漠然に思った。気づくと決算発表は四半期で公表するようになり、毎期ごとの成長達成に対するプレッシャーが強くなっていく。年間で見れば年度契約があるから年度末の時期に売り上げは集中するし、期初はコスト先行になる。

そう説明(言い訳)するのが嫌なのかどうかは知らないが、中間検収などいうことを始めて四半期の数字に影響が出ないようにし始める。

これもやり始めて随分と経つ。

こういったことをやり始めると月次での予実のトレースに拍車がかかる。もちろん、数字を追っているのは現場の開発部門ばかりではない。かえって案件獲得などは水ものであって、なるようにしかならない。数字と睨めっこしているのは経理部門であり、CFOである。

経営の責任を持っているはずのCEOより、決算の数字に責任を持っているCFOの方が強くなる。

CFOは経営的には安定する。リスクのある案件より、確実に積み上がる案件しかCFOが承認しないからである。

技術的に面白みがあったり、その案件は取っ掛かりでしかなく、その後ろの案件を、いやクライアント全部を取りに行くような戦略的な位置付けの案件であるにも関わらず、過度なリスク回避策を求められ、コストかコンテンジェンシが増え、案件の魅力が減衰していく。

CFO経営は魅力的ではある。なにせ、そのビジネスモデルでやっていけているうちは、ただ、数字を追いかけ、少し実績が伴わない気配が見えたらコストカットを言えばいいだけなのだ。

その数字を追いかけるために、本社の管理部門は巻き込まれ、現場にレポートのためのレポートを、似て非なるレポートをあちらこちらの管理部門から開発部門に丸投げされる。

経理部門然り、PMO然り、品質部門しかり、経営企画部門然り。

本来、開発部門はクライアントに顔を向けていなければならないのに、強制的に頭を両サイドから掴まれ、180度捻られる。

開発のリソースをクライアントに、ではなく、管理部門が吸い取っていることにその本人たちは気づいていない。

CFO経営は財務体質は健康で強くなるので、内部留保は積み上がる。しかし、考え、実行する能力がすり減らされ、内部に向いた仕事ばかりが増えていくから、それを使うための脳が萎縮していくのである。

この状態で開発部門に何をしろというのだろうか。

 

 

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