エンジニアの仕事には『やりたいことをやらせない』もある

人事関連の方から相談したいと話があり、指定のお時間に場を持つことになった。話を伺うと、組織内のelearnigの見直しを考えらているらしい。

これまでの経験から言えば、elearningのコンテンツで面白いと思ったり、興味を持つようなものはなに一つなかった。セキュリティ、契約関連の法令、ハラスメント、労働法関連などいわゆるコンプライアンス関連ばかりが更新され、所属する全ての社員が受けさせられる。背景には、年1回は教育を行うと自ら決めているからで、それを主管部門が行なっている。

何れにしても、面白くない。

話を聞いていて、話の流れがおかしいなと思った。それは、こんなことを聞いたからである。

  • 各部門内で行なっている教育のコンテンツがある。それを全体で教育したら良いのではないか
  • 共有するにあたり、新しいプラットフォームを考えている
  • 例えばA社のものが候補になる

こちらからの違和感を伝える。

  • 各部門で行なっているのは、事業特性があるからである
  • そもそも他部門のコンテンツに興味を持つだろうか
  • 現時点では部門内に閉じているのであるから知りようがない
  • 他部門のコンテンツを知りたいとニーズがあることを確かめたのか

大事なことは、知らないものを欲しいとは思わない。知っているもので、自分が関心を持っているものだけである。

こうしたニーズをマネージャに聞いてはいけない。欲しいかと言えば、あった方がいいと答えるのが定石だ。マネージャの担当部門内で教育コンテンツが回っていればいらないと答えるだろう。

エンジニア目線で言えば、必要なときに求めるのであって、棚で埃をかぶっているようなコンテンツに目は行かない。新しいもの、自分の知らないものはネットで調べてしまう。組織内を検索するのは、組織の中のことだけである。もし情報を身近なところから得たいと思えば、知っている人を探す。

人事の人も元は、教育の機会の再創出を狙ったのだろうが、それがいつの間にか、システムの導入に変わってしまっている。これは今の仕組みの問題点の原因を掴みきれていないからだと思っている。

そこをクリアした上で、なにをするかを小さく始めないと使われないシステムを導入することになってしまう。

エンジニアの仕事には、やりたいことをやらせない助言もあるのだと思う。

 

 

「ない仕事」の作り方 (文春文庫)

「ない仕事」の作り方 (文春文庫)