大規模プロジェクトと同じようにエンジニアとしてのスキルをリリースしよう


金融システムの大規模プロジェクトを経験したことがあるエンジニアなら、あの複雑な開発線表を思い出せるだろうか。基本開発線表で開発している最中に、法対応や追加機能開発や次年度開発のように多くの要件を必要なタイミングでリリースする、アレです。

ふと、今時のアジャイルなソフトウェアのリリースと重厚長大な金融システムのリリースってべらぼうに違うようなぁ、とボケっと思いにふけっていたとき、それ、基本線表を中心として必要なタイミングで機能をリリースするのって、エンジニアのスキル開発と同じだ...と。


幹となるスキル
エンジニアのスキルは、基礎スキルと技術スキルの2つで成り立ちます。いくら技術スキルだけが他の人より長けていても、基礎スキルが脆弱であれば、実用に耐えません。技術スキルを築くための正に基礎が“基礎スキル”です。

基礎スキルは、以前書いたように“文章力/意思疎通/チームプレイ”など、言わば社会人としてどのような仕事に就くにしても求められるスキルです。この基礎スキルは、エンジニアを支える幹です。配属して、仕事を与えられると兎に角、周りに着いていくことを優先するので技術ばかりを追うものです。それは、それで間違っていないのですが、どうも技術スキルばかりに偏食してしまい、鏡に映す自分の姿はやせっぽちで枝だけ重そうにしているようにしか映りません。

木の幹の年輪が毎年少しずつしか大きくならないように、基礎スキルがたった数か月や1年でどうにかなるものではありません。気長に、じっくり、自分の得手不得手と向き合いながら、今はコレ、それができたらアレと挑戦し続けるものです。

技術スキルと違って、基礎スキルの向上は、日常の変化として感じやすいものです。エンジニア本人もそうだし、まわりもそうです。例えば、意思疎通のスキルの内、ファシリテーションのスキルを向上させ、ミーティングや仕様検討の場を結果が出るようにしようと思い、プロジェクトファシリテーションをネットで読んで実践したり、書籍を読んで実践する取り組みを試行錯誤を何度か続けることで自分としてやりやすい形を得たり、別の課題を見つけたりできるものです。

誰に言われたわけではなくても、そのように振る舞う人がいれば、ミーティングの場で周りは気付くものです。特に、場の主催者は元々そのようなことを気を配っているので敏感に反応します。「何か意図があって積極的にふるまっているのだな。」と。

基礎スキルは、それこそ、幅も深さも広いのです。技術は変わっても、基礎スキルが変わることはないでしょう。変わるのはその時代時代で流行りで重きを置かれる具体的なスキルが移るだけです。全体としては何一つ変わらないし、何一つ欠けたりしない。

エンジニアが会社を変わっても求められるスキルであることも同じだし、業種が変わっても、いや、業種が変わったらより求められるでしょう。

基礎スキルは、システム開発で言う“基本線表”のようなものです。これがしっかりしていないと、いくら魅力のある、価値のある追加機能開発が控えていても、それを支えるだけの基礎がないので受け止められません。


枝は生え変わると考える
基礎スキルの上に、枝のようになるものが技術スキルです。これは、変わる。時代とともに技術は変わる。開発方法も変わる。枝のように次々と世代交代していきます。

技術スキルはエンジニアにとって必要不可欠であり、技術を身に着けるエンジニアにとっても成果を確認しやすいために魅力があります。技術が変わるのは、時代の要請かもしれないし、顧客の要望かもしれないし、組織の中の異動かもしれません。理由は何でもいいのかもしれない。エンジニアとしては、新しい技術に接していられるのなら。

技術スキルは、技術そのものの習得することも要求しますが、本質は違います。

元々、技術スキルは、実務に適用する技術そのものと方法論の習得と2つあります。実務に適用する技術は、モノをつくる力です。これがないとモノが出来上がりません。でも、作れるならどんなやり方や自己流でもいいのかと問われれば、それは違います。エンジニアはエンジニアリングを担う人です。体系立ったモノの考えなく、チームを組んでモノ作りはできません。開発方法のやり方も、作法も一人ひとりの考えを束ねるものなのです。

技術そのものは、モノを作り上げるための手段です。手段からその時々で使うものも変わってくるのです。そこで必要なことは、道具としての使い方だけです。様々な言語があるとしても、どれを選択しても作り届けるものは同じ顧客の要求するものです。道具の使い方を学べる力を持つこと。これこそ、物を作る楽しさを支える力であって、それと方法論があってはじめて技術スキルになるのです。

顧客が変われば欲しいものが変わる。時代が変わればやり方が変わる。自分も率先して変わりたい。それはまるで大規模プロジェクトのように次々とリリースするように。そんな風に考えるとスキルを伸ばすことは意外と楽しいんじゃないか、と思うのです。



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