相手に合わせて伝えないと現状を悪化させるだけなんだよ。


遠方と言っても東京から見た場合の大阪、大阪から見た場合の東京程度の距離感のプロジェクトがあって、彼の地のシステムエンジニアは少なく、システム構築の技術レベルは十分だけど、「プロジェクトマネージャーはねー、今回は育成面が大きいから。」と「なんだー、プロジェクトのリスク大きいじゃん?」というプロジェクトがあったんです。


そのプロジェクトマネージャには対面であった事はなく、素性も知らないのでワタシは今回のプロジェクトで育成しようとしているプロジェクトマネージャのスペックがわからない。でも、わからないから、では何も対策が打てないし、対策自体が必要なのか不要なのか判断もつかないので、一緒にプロジェクトをやったことがあるシニアエンジニアのところに出向いてお話を伺う。

「エンジニアとしては大丈夫ですよ。だって、私が鍛えましたから。」
「どのくらいのレベル?」
「中規模のプロジェクトならリーダできるから。」
「ふううん。で、プロマネはやったことあるの。」
「それがないんだなー。」
「知識ゼロなの。」
プロマネが何やらないといけないのか知ってるかな。わからん。」
「その程度か。」
「その程度。」


じゃあと、プロジェクト計画書を作ってもらったけれど、どうもというか、やっぱり知識の裏付けがなさそうだけど、組織の標準や手続きにかかわっていないと書けない個所ともダブるので一概に判断してしまうのはちょっと危ないかもと思って遠隔でWeb会議をやってみたんです。やっぱりねー、例えテレカンであったとしても


「相手の声を聴く」


と言う行為はとっても代えがたいものです。会話する相手が持っている仕事に対する理解、自信、姿勢が感じ取れますから。

「項番1の記載の意図が読み取れなかったんだけど、説明してもらっていいかな。」
「表1の記入項目は、プロジェクトチーム内の会議、ミーティングも書く必要があるんだけど、その意図はわかるかな。」
「障害管理に適用するプロセスは、プロジェクト標準に印がついているけれど、これだとプロセスを自分で作るか、顧客標準を適用するかになるけど準備できるのかな。『組織の標準を使う』とした方が良いと思うよ。運用が柔軟だし。」


遠隔のWeb会議をはじめていて、「これは何かおかしい。」と気づいたんですね。妙に「はい。」「そう変更します。」という受け答えが多いから。勿論、指摘した内容が「ごもっとも」であれば「(じゃあそう直すよ。リーズナブルな指摘だし。)」とか「顧客と会話していてアレコレ指定されているからこのままで!」とか考えを行ってくれると思うんですけどまったくそれがない。


前もって聴いていたこと、つまり、プロジェクトマネージャは初めてなのだということが本当であると確信を持ったんですね。まぁ、他に出席していた方々は薄々でもしっかりでも知っていたようです。知らないのは面識のなかったワタシだけ。その、経験値不足を知れたのでそれはそれでいいのですが。


ところが、知っている人たちはその育成しようとしているプロジェクトマネージャが出来る前提でいろいろ突っ込み始める。後日のとある日、進捗を確認するためにWBSを共有してもらったらしくて、その書きっぷりをみたら

これはひどい。」
「このWBSでは進捗管理にならない。」
「あんな風に直せ。」
「こんな感じで直せ。」


とテレカンして突っ込んだそうです。これじゃダメですね。絶対伝わらない。だって、ツッコむ先のプロジェクトマネージャは経験知も知識もないんだもの。伝わるわけがない。というかプロトコルが合うはずがない。


ツッコむ側は、プロジェクト計画書のWeb会議より以前から素性を、スキルレベルを知っていたのに現物を観たらそれを棚に上げてツッコむ。いや、良いのですよ、相手に伝わるのなら。でも、

「相手のレベルに合わせて会話しないと100の内10も伝わらないですよ。」


それも、知識不足のプロジェクトマネージャに、いや、そんな言い方はかわいそうだ。だって育成させるんだから。チャレンジ指せるわけですよね。ならば、育成させるんだ、というマネージャはきちんと支援体制を作らないといけない。支援のさせ方はいろいろあるだろうけど、何れにしても、そのプロジェクトマネージャに伝わることを第一に考えて伝えようとすることができる人を付けないと。


そうじゃないから

WBSの予実の差異があちらこちらのタスクに赤字で表示されているけどどうするんだ。」


とか詰問のように言うわけです。これじゃ、何も進まなくなっちゃいます。ダメです。


プロジェクトマネージャのスキルがなく、でもシステムエンジニアとしてのスキルが十分あるなら、その延長線上で解り易く、具体的に指示してあげることです。なぜ、それが必要かその解説も手短に教えてあげないといけない。日々やっての欲しいことがあるなら具体的に作業を指示しなければ現状を悪化させるだけです。


WBSexcelならフィルタで、チケット管理システムならクエリで昨日の実績の確認、今日の作業、とまず、計画したことを確実に進捗させることを指示してやりなさい、と言わなければいけません。


これは育成させる側が本来は自主的にやらないといけないことですけどね。