レビューで怒ってもいいけど冷静にね


なんて、そんなことを言ったのはいつだったか。仕事仲間が傍でキャンキャン騒ぎながら話しかけて…。


「聞いてください、ひどいんですよ。急なスケジュールを入れてきて、レビューを急いで欲しいというから対応しようとスケジュールをアレンジしてレビューを始めてみたらその資料がめちゃくちゃで」
「それ誰だっけ」
「Aさんです。あと若手のBさんです」
「(視線を泳がせながら)Aさんか、前にもそんなことあったよ」
「そうなんですか。もう、ブチ切れちゃってもいいですか。クレームあげます」
「いいじゃないの。バンバンクレームあげれば」


「ですよね。じゃあ本人に」
「それじゃダメだよ。マネージャクラスにあげないと」
「そうなんですか」
「弾を撃つなら効果があるところを狙わないと。クレームの対象に行っても何も解決にならないからさ」
「なるほど」
「で、何があったの」
「レビューに必要な資料がそろっていない。記載内容が不整合ばっかりなんです」
「想像した範囲だね。変わっていないなぁ」
「前からですか」
「まぁね」
「それで、急いでいるというから指摘事項を伝えたら、『わざと沢山指摘しているんだろう』とか言うんです。ひどくないですか」
「あの人は前のときもこっちがスムーズに進むようにサポートしてあげたら何を勘違いているのか知らないけれど、すごく不機嫌に反応していたの思い出したよ」
「そんな感じです、もうっ」


「で、Bさんは何かやらかしたの」
「BさんはBさんで何も知らないんですよ、レビュープロセスを。経験があまりないんだろうなと思って育成をサポートするつもりでアレコレ教えてあげてもさっぱりで」
「こっちに育成の責任はないと思うけど」
「でも若かったし、ちょっとカワイイし」
「カワイイかどうかはまぁいいけどさ。育成は所属のマネージャの仕事だからね、勘違いしないで。それと守らないルールを覚えてもらうことは別だよ」
「あ、はーい」


「ところでさ、こっちはレビューの承認権限持っているのわかってるかな」
「あ、そうでした」
「ルールを満たしていないなら止めてもいいんだよ。第三者に説明できれば」
「第三者に説明、ですか」
「そう、ルールで決まっていてそれを守らないのならそれはコンプラの観点で止めないといけない。それも仕事のうち」
「へー、本当に止めていいんですか」


「実際は、止めるというより改善されるまでOKしないということだね」
「なるほど」
「でさ、レビューで怒ってもいいんだけどさ、ルールの上で怒らないと自分が怒られるよ」
「ルールの上で怒るって…」
「守るまでは進ませません、と言えばいい。駄目出しをする以上、ルール違反も伝えることを忘れちゃいけない。ここまでやるなら怒ってもいい」
「はい」
「レビューイの対応がコミュニケーション上の阻害となっているなら上位のマネージャにクレームもすればいい。仕事のためにならないし後進のためにもならないと」
「はい」


「仕事だから誰にでも協力はする。これは絶対。でもルール違反があるならそれを正すように指導する。それだけなんだよ。それだけをするのに自分の感情を混ぜてしまったら向こうと同じ穴の狢だよ」
「同じになるのは嫌ですぅ。そうならないようにします」