タスクが早く終わったら次のタスクに手をつけず、価値のあることに時間を使おう
あるプロジェクトでチームを混乱させたことがあるのです。ワタシがこの一言を言ったとき、技術リーダ役のメンバは明らかに困惑した顔をしていましたし、他のメンバは本当かどうか戸惑っていました。
「チームで見積もった工数より早く終わっても、次のタスクに手をつけなくていいよ。その代わり、空いた時間に手順の見直しやこれから必要になるだろうと思う技術的な調査に使って」
「もう一度言うけれど、次のタスクに手はつけないでね」
工事現場の監督経験者の体験談
「会議が早く終わっちゃいましたね。会社に戻りますか」
「今から戻っても定時じゃん。今日やることは終わったのでしょう」
「はい」
「なら帰ろう」
「いいですかね」
「あのさ、現場で現場の監督をやっている頃に失敗したことがあってね。毎朝、朝礼をやるんだよ。現場だから事故が起きるからね。安全とか作業上の注意事項とか、段取りとかね。それで今日の予定している作業を確認するの」
「工事現場のそばを歩いていて見たことあります」
「それだね。でさ、予定していた作業が見積もりより早く終わったときがあったんだよ。でさ、欲をかいたの。もう一つ仕事を進められるって。で、それを作業員にやってくれって言ったんだよ」
「そうしたら」
「もちろんやってくれたよ。でもね、翌日から予定していた作業が早く終わることがなくなったんだよ。彼らだってバカじゃないからさ、この監督は早く終わると仕事を詰め込むと学習したんだよ。だから次の作業を早くやっても仕事が増えるだけだから、見積もり通りにやろうって」
詰め込むことで誰が利益を得るか
工事現場の監督はエンドユーザで、一緒にシステムのプロトタイプを利用者に説明して回るときの打ち合わせの帰りで体験談を話してくれたのでした。
体験談で利益を得るのは工事現場の監督です。作業が早く進めば工賃も減るし、レンタルしている機材もやすくなります。でも、作業員には利益がないところか、働く日数が減るので収入が減ります。つまり、早く終わるとゼロサムが起きるわけです。その上、忙しいし疲れるし、ですから。だったら、早く終わらせることのメリットは作業員にはありません。だから、計画している通りに終わるなら怒られませんから、作業を計画で進むように調整することにしたのです。
早く終わったら価値があることをやる
冒頭の早く終わっても次のタスクに「手をつけてはいけない」と言う指示は、ワタシだけが嬉しいだけです。
もちろん、プロジェクトのスケジュールが立て込んでいて、マイルストーンに終わらす必要があるとか、トラブルを解決しなければならないとかプロジェクトの進捗状の課題を解消する必要があるなら、それはチームと状況を共有して、解決しなければなりません。
でも、そうでないのに詰め込む必要があるのでしょうか。
一見、平時のときのプロジェクトでは、ついつい作業を詰め込んでしまいますが、そうした時こそ、プロジェクトマネージャはブレーキを踏まなければなりません。
そういうときこそ、プロジェクトの先に必要なことに時間のリソースを当てておきましょう。
Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン
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