人は人に教えるという行為を軽く考えすぎている


若手のエンジニア向けに研修をして欲しいと白羽の矢が立った、なんてかっこいいものでもその界隈のオーソリティだから、と言うでもないけれど日頃のコミュニティ活動の成果か声を掛けられたんですね。プロジェクトファシリテーションに関するエリアで。


若しかしたらそのあたりは先月当たりのブログで何らかを書いているかもしれないけれど、月も変われば忘れてしまっているのか記憶を上書きするほどの研修に対するプレッシャを自分で自分に掛けて仕舞っていたかもしれないですけど。


「先生をやってください。」とか「あれこれやって!」と頼む方はそれを実際にやることがどれだけ大変かはわかっていないのは世の常だし、ワタシ自身が人にタスクをお願いするときに、そのタスクを受けた人がどれだけ大変に思うかなんてまで考えないのはワタシがその人ならできるスキルを持っていると知っているからで。それだけ、一緒に仕事をしているからそこまで言えるんだけれど、往々にして、タスクをゆだねる先方のスキルレベルを「知らないで頼んでいるだろう?」って疑わざる得ない状況だってよく見かけるもので。


実は出たがりで、露出したい方の人なんだと自分のことを認識したのは何時だったか忘れてしまったけど、再認識したのは30歳を過ぎたころだった。人前に出て「褒めて褒めて!」なんて夕立のセリフのようにアピールすると珍しいものを見たように反応をしてくれるからこっちまで勘違いをしてしまうもので。


そうした勘違いを引き摺ったままにこの歳まで経ってしまったのだけれど、人と言う生き物は面白いもので今までの延長線上の仕事を引き受けているつもりでも、自分で伏線を張っていて上手くそれを回収できる話仕立てになっていることに感心しきるのは自作自演ポイけれど、イベントを起こしたのはワタシではないから世の中面白いものだと思うんです。


春先に関心を持っていてフォローしていたブログで研修開発の書籍が出ると聞いて関心を持って、実際に書店に行って手に取って束の間悩んで一旦本棚に戻して、でも内心は買うことを決めて、日を改めて手に入れるようになったのは自分に必要なスキルを補完するための投資であると確信していたからで。


実際、読めば読むほど、無知であることを知るし、過去のアクティビティを思い出すとアンチパターンを地でやっていたと自覚せざる得ないから赤面して俯いてしまうくらい。もう、50歳近くなってもそういうシチュエーションになれるのは単なるバカなのか、無知なのか、それともある種才能なのかは知らないけれど、それはそれで客観的に観て面白いからそうした経験をさせてくれる自分が面白いと思う。


例えば、以前の割と流行のネタのワークショップ研修での受講者の反応が悪いのは、「受講者が受け身で受講者自身が保守的な文化の中で仕事をしているという背景を持っているから仕方がない。」なんて思っていた節があるのだけれど、書籍を読んでからは考えを改めたんですね。


それは全く持って「独りよがりだっただけなんでは?」と。


だから今回の依頼された研修は結構真面目に研修設計をしました。はい。もちろん、まだまだなんです。申し訳ないけれど、この講座を受講する初めてから数回までの方には講師たるワタシの試行錯誤を講座内容と一緒に受け止めてもらわないといけないところがホント申し訳ない。こんなこと、以前は微塵も思わなかったけど、謙虚になったわけではなく、いろいろ知ったから、です。だけど、それを知っているのはワタシだけだし誰かに知らせるものでもないのでワタシだけの中に収めておくのです。


研修設計をして、実際に、一から研修テキストを書き起こしている最中はとてもしんどいと思ったことが度々あって、用もないのに他のフロアに出向いてみたり、リアルに現実逃避したい、なんて思ってみたりまるで同人誌作家のコミケ前の入稿〆切で追われている気分を片鱗でも味わえたのはとても良い経験でした。


研修のテキストはテキストで、目的があるわけです。その講座で学習してスキルを身に付けて欲しい、と。で、その講座の受講対象者により、前提知識を設定できるのですが、今回は若手エンジニア向けでしたから、ものすごくテキストを作り込み工程が大変でした。それは、受講対象者は、プログラミングの知識はあるけれど今回の研修が対象とするその領域の知識を期待できなかったからなんです。


であれば、期待できないと覚悟をするから、高いコンテキストではテキストのコンテンツを書き進めることはできなくなるわけで。だから、一旦書いたものでも何度も見直してコンテキストを下げるように修正し始めると悲しいかな、書き始めた初めの章を何度も見てしまうので、進捗が出ないことになるわけです。で、プレッシャを感じるループの完成です。


こうしたシチュエーションのとき、プロジェクトマネージャという職業の性が発揮されるのですよねぇ。頭の中にカレンダを書いて、今居る日にちをマークダウンして、希望納期と現実の較差を知って、納期を待てるまで引っ張ってその対価を支払うリスクを認識して且つエクスボージャを推し量って、兎に角、進捗が出るようにタスクのアサインを変えて、とやってしまう。


まぁ、そうしなければテキストが完成しないので拙いんだから仕方がないってい言えば仕方がないんですけど。他に方法を知らない、いや、もっとちゃんとタスクを切っておけばよかったんですが、まぁ、想定外の割り込みがあればこそのアジャイルなタスク管理をしたということでいいんじゃないか、と。


それにしても、ワタシは人が人に教えるという行為を今まであまりにも「知らなかったんだなぁ。」と学んだのでした。でも、まだ終わったわけじゃなくて、実際の講座をやり終えて、評価を聴いて、修正するループに入れないといけないのですよ。そうして、洗練させていきたいと思っているから。