deliverableだけでWBSを作ってもシステムが出来上がらないという罠

WBSは何をベースに考えればよいか
WBSとは、Work breakdown structureの略称です。エンジニアリングでよく使うもので、PMBOKで出てくるけれど、PMBOKを知らなくてもWBSだけで一人歩きしているのでそれなりに知名度はあるものだ。システムエンジニアリング界隈では日常的なもので、ウォーターフォールで半ば必ず使われるものだから、その界隈な人は見たことがない人はいないだろうと思う。まぁ、最初からアジャイルチケット駆動開発だったらあまりしならないかも。


WBSはどのように作られるか
さて、そのWBSはどのように作られるだろうか。初めてWBSを見るような経験の浅い、そう、新人システムエンジニアに馴染むがてら、「WBSを作ってご覧」と見本も一緒にテンプレートを渡すと様々な解釈の上に成り立っているWBSが見られてとても興味深い。こういったプロジェクトマネージメントのツールであるWBSも人の経験によって表現が変わることを知らされる。

では、WBSは何をベースにどうやって考えればよいのだろうか。プロジェクトの基本に戻ると良くわかる。

“目的を達成するためのアクティビティ”


補足をしたくなるが端的には、こういうことだ。これに制約として、品質、コスト、納期、範囲(スコープ)の4つの網が掛かる。これに基づけば、“目的を達成すること”がゴールになるから、目的ベースになる。システム開発なら、稼動するシステムやドキュメントがそれに当たる。そう考えれば、WBSは、稼動するシステムやそれを文字や図で表現するドキュメントになることになる。

正解は、deliverable(成果物)となる。


deliverableだけでWBSを作ってもシステムが出来上がらないという罠
では、稼動するシステムとドキュメントをWBSに展開するとどうなるか考えてみよう。deliverableは、フェーズ単位に取りまとめることが多いから、WBSのレベル1にはフェーズ名、レベル2には構成、レベル3は構成のひとつ展開したもの、それより下のレベルはそのプロジェクトの管理単位のメッシュによって、決められる。それら一つひとつのアクティビティが部品となって、deliverableを構成するからそのフェーズをexitするとdeliverableが出来上がっていることになる。

フェーズ(レベル1) 構成(レベル2) deliverable(成果物)
要件確認 第1章... 要件確認書
要件確認 第2章... 要件確認書
要件確認 要件確認書
設計 第1章... 機能仕様書
設計 第2章... 機能仕様書
設計 機能仕様書
製作 aプログラム コーティング
製作 bプログラム コーティング
製作 : コーティング
試験 aケース 試験仕様書
試験 bケース 試験仕様書
試験 : 試験仕様書

このほかWBSの一つひとつの管理項目がプロジェクトごとにあって、一般的には、担当者、予定開始日、予定終了日、実績開始日、実績終了日、予定工数、実績工数などこれらも管理方針により、プロジェクト又は所属する組織の方針による。


見えない作業
ところで、プロジェクトのWBSは“目的を達成するためのアクティビティ”である。
上記の例だけで稼動するシステムが作り上げられるだろうか。もし、そう思うなら、そのWBSには、明示されていない作業が定義されている以上に暗黙として含められていることになる。

例えば、顧客などのプロジェクトのステークホルダとのミーティングがそうだ。要件確認でのヒヤリングもそうだし、そのヒヤリング内容を開発チームで共有するプロジェクト内のミーティングもある。ミーティングするにしたって、手ぶらでは行けないから、ミーティングを限られた時間で得たいアウトプット、ヒヤリング項目の回答を得るだとか、聞いたことから想定される技術的な課題の解決方法など、そのようなことの準備などがある。

また、ドキュメントを作るのであれば、日々更新されるドキュメントの構成管理、版管理は必要で、それをドキュメント管理システムによるのであれば、その仕組みを立てたり、日々運用したり、それの運用ルールも決めておくことも必要になる。それらのアクティビティは、deliverableを作るうえで必要なことだが、deliverableだけでWBSを展開すると、漏れるアクティビティのひとつだ。


付帯作業を忘れずに
deliverableで展開することは稼動するシステムのために必要なことだが、それだけでは日々プロジェクトを運営できないのである。これが罠。
そういった作業を付帯作業と呼ぶこともあるが、その付帯作業を見積もりやプロジェクト計画時に何がどれだけ必要か、プロジェクトの特性、それには顧客の特性も含めるが、それを考慮した上で計画しないとWBSが使い物にならず、ウォーターフォールがだめだとか、WBSは使いづらいといったずれた見識を持つことになるので注意しよう。