残業なんて、する方もさせる方も間違い


誰も帰らないから帰れないは愚の骨頂
プロジェクトでチームで仕事をしているとき、自分は今日の予定が終わったけれど、「他のみんなが帰らないから...」と残って作業をするのは間違っている。何が間違っているかと言うと、2つの点が挙げられる。

  1. 本来やる必要のない作業を“ムダ”にやっている
  2. チームで仕事をしているのに、誰かがハマっている時点でチームとしてリカバリのアクションをしていない


なぜ、馬鹿らしいのか具体的に観てみるとわかりやすい。


経営の観点 −リソースのリスクマネジメント−
どんなプロジェクトでも計画を立てて作業を進めるけれど、特に理由がないのに残業をしてまで“前倒し”する理由はありません。
#キッパリ
前倒しできるくらい順調ならその分、きちんと帰って体調を整えさせるとか、自己研鑚させるとか、次に備えて行動を促す方が断然良い。残業をさせることは、チームメンバに予定外の負荷を掛けることになり、体力を摩耗させることでもあるのだから。機械が摩耗すれば壊れるだけだけれど、人が摩耗し始めると不平不満を言い始め、それを周りに伝搬させる。伝搬し始めたら、もう、それはとても手ごわい状況になってしまう。マネジメントとして初動はタイセツだ。


経営の観点 −コストのリスクマネジメント−
予定どおりできているなら、それ以上進めるのは計画外のコストを消費することになるから、−外的要因でプロジェクトが止まる可能性がゼロではない場合、プロジェクトオーナの企業の業績悪化で中止になることがよくあるけれど−、その場合、予定外に進めてしまうのは、これもムダなコストを先食いしている、つまり余計な消費していることになって、好ましいことではないです。

もう一つ、付き合いで残業するようになると残業をするために必要のない作業を作ることを始めるということ。作業は何等かしかのアウトプットを出すためにするものであって、時間を潰すために何かを作ることではない。経営の観点から言えば、必要のないものを超過労働させて作らせていることになる。誰も必要としていない、使われないモノを作ることにどれだけ価値があるだろうか。考えなくてもわかることである、ネ。


経営の観点 −リソースの効率化−
もし、開発チームで誰かが遅れているのに、遅れているメンバに合わせて“残っている”なら、チームとしての業務量の最適化ができていない。今、チームとしてやることは、遅れていることをキチンと把握して遅れがあるならプロジェクトチームとしてどう対応するかがプライオリティが高い課題に対するアクションだ。それをせずに、別の作業を進めるのは間違ったリソースの利用に他ならない。プロジェクトチームが気づかないなら、マネジメントが気づかなければならない。

現場に一番近いマネジメントが、プロジェクトのメンバとして作業してはいけないと言う理由は、このような状況下でプロジェクトを俯瞰し、どこに問題があるかを見なければならない責を負っているから。


プロジェクトの観点
経営の観点−リソースの効率化−と同じですが、プロジェクトのチームとして見ると問題の扱いが変わる。チームの誰かが遅れているということは、プロジェクト上の大きなリスク、スケジュールオーバーランやコストオーバーランを引き起こす要因を招くことになる。

プロジェクトチームの観点ではそれこそ、残業をする自体に陥ることは本質的な課題、つまり、進捗遅れかそれ以外かしかない。


プロジェクトの観点 −進捗上の課題−
炎上するプロジェクトの元の火種なんて、最初は小さなもので、それが彼方此方に広がって手が付けられなくなるものだ。いきなり隕石がプロジェクトに落ちてきたりなんてしない。
#稀にあるけれど。

誰かメンバが遅れはじめる。それをほっておく。手が付けられなくなってから気づく。慌てて、リカバリを始める。そこも追いつかなくなる...。大概、プロジェクトマネージャなりSEリーダの管理スパンが長すぎ、火種を大事に育ててしまう。そしてひとつ遅れると次第に周りが引っ張らる様にとも連れを起こし始め、プロジェクトはデスマ一直線...。
#合掌(−人−)

プロジェクトチームとしてやらなければならないことは、佳境になってからコミュニケーションを密にするのではなくて、はじめからしなさい、と言うことに尽きる。悪いことは言わないから、プロジェクト当初から、デイリースクラム(=朝会)をやって、

  • 昨日の実績
  • 今日の予定
  • 困っていること


をプロジェクトチームとして全員で共有しなさい、です。毎日やることで、進捗上の課題を全員で知り、全員でどうするかを考える。全員の問題にすることで、進捗が進んでいる人が遅れている人の“今日やるハズの作業”を巻き取るとかできれば少なくとも“進捗上の課題は遅れているその作業ひとつだけに抑えられる”のだから。


プロジェクトの観点 −進捗以外の課題−
もし、プロジェクトマネージャが進捗上問題のないメンバが付き合いで残業をしていることを発見したら、即、帰らせなさい。それ言うためには、一つひとつのWBSの進捗を把握していて、誰がオンスケで誰が問題を抱えているか把握してなければならないわけで、それはそれなりにプロジェクトマネージャに負担が掛かるが、デイリースクラム(=朝会)をやっていれば、追加で負担が増えるわけではないので気にしない。

それより、プロジェクトマネージャは、メンバがWBSに基づき、価値のあるアウトプットを作るための作業をしているかどうかだけにフォーカスする必要がある。それ以外は、ムダなことでプロジェクトのaccountabilityを持つプロジェクトマネージャとしてさせてはいけない。

必要のない残業にコストを使うなら、メンバのPCを新しくて、メモリを増やすとかサーバを立てるとかした方がナンボ良いことか計り知れない。


経営者の観点からも現場のプロジェクトの観点からも残業なんて何一つ良いことはないのはこういったことからなのですよ。